


柳田國男です。
折口信夫です。
アマガミいちの人格美人、輝日東の核弾頭・タナマッティこと棚町薫編、いきます。
薫は、OPの八卦占いでは、方角は「南」・性質は「離」・外剛内柔で、火属性、熱し易く冷め易い、と出ていました。

名前は棚田の「棚」に、田んぼの畦道から現代の都市までを示すことのできる言葉である「町」、火をつけて良い香りをつける燻製、あるいは風薫るの「薫」です。
広い時間・空間を、火や風のように絶えず形を変えながら吹き抜けていくようなイメージでしょうか。
自由で芸術家で情熱的な彼女にはぴったりの名前やね。
キャラクター名の選考会の様子みてみたいです。僅差で没になったやつとか気になる。
君もその域まで来てしまったか。
UFO!
それ阿久悠です。
2年前のクリスマス、デートをすっぽかされた橘を薫が元気付けていた。





これにて棚町薫編終了です。お疲れ様でした。
まだプロローグやがな。
正直、もういいじゃないですかこれで。家呼ばれてるし。めっちゃ良い関係ですよ。
そんなこと言ってるとこっから先見れへんよ。
すっぽかしの後の橘を、薫が元気付けてくれたと。これは物語における「貸し」ですね。このあと橘はその借りを返す。
どのようにして返していくのか。先にぼやかして言っておくと、薫の家庭環境についてちょっと力になって、そしてクリスマスにも薫をちょっと助ける。
薫が橘の運転する自転車の後ろに乗るというのも重要です。2年前のクリスマスのこのシーンでは雪道で運転がおぼつかないですね。次に乗るのはいつでしょうか。その時の運転はどうか。
ほぼ答え言っちゃってない?それ。
それを言うことで逆にバレるんですけどもね。
教室。薫が寝ている橘の右耳に甘噛み。
左耳も噛んでみろと挑発。噛まれる。


シーン3
二人の夫婦漫才が始まる。


シーン4
梅原が合流。薫、健気小町に。

シーン5
薫がポートタワーを提案。梅原は下見も兼ねて行こうと乗るも、橘は拒否(クリスマスへのトラウマ、高所恐怖?)

シーン6
絢辻に席に着くよう注意される。薫の前で綾辻さんの肩をもつと、薫がカッとなって橘に殴りかかろうとする。


シーン7
パンチ回避からのパンチラ。そして本当のパンチをもらい、保健室へ。



棚町薫編はこれにて終了です。お疲れ様でした。
って言いたくなりますでしょう。中学時代の二人の具体的なエピソードはほとんど明かされないのですが、悪友っていってもここまで距離感近いのはえぐい。
まあ側から見たらあいつら付き合ってるねんやろ?ってなるわな。
ただ薫は他の人にもこの距離感なので、西海岸的な性格ということで。
私なんかは篠原ともえの高校時代だと思って見てますよ。
薫がパリで大人気になる未来が見えます。
気づくと保健室で寝ていた。

知らない天井...
柳田、エヴァに乗れ。
誤魔化そうとする薫と見破る純一。自分の行動を反省してしおらしい薫。それを見て純一は元気を取り戻す。薫が保健室を出ていったと思いきや、再びカーテンを開けて、放課後校舎裏に来て、と言われる。




放課後、校舎裏で何があるのか妄想する橘純一。





なんかこのブログにアップするために激写したアニメのスクショ見返してるんですけどこの回といい薫回は作画の安定を感じる。
ちなみにシーンを激写してるとき、ちょっと、ポケモンスナップガチ勢の気持ちがわかりました。「ポケモンスナップ RTA」とかで動画検索していただくと彼らの情熱がわかるともいます。それに近い作業だと感じました。
シーンだけでなく微妙な表情の変化の移り変わりを見逃さずにスクショする必要がある。しかし、かといってやたらめったら撮っていては容量は増えるし逆に間に合わない。ある種のシーン展開の予測と、構えが必要になってくる。あるいはここはそんなに使わないだろうなというところは力を抜いたりね。
あとこの作業は何周もしたくないので一発で決めたいですからね。っていう思考回路が、ポケモンスナップRTA走者の方と似ていてちょっと面白かったです。
RTA走者って男ばっかよね。
やっぱ男は皆どこかオイディプスだからですよね。スフィンクスの謎々を解いて、母を犯し、父を殺す。避けられないテーマなんでしょうね。男って本当に短絡現象が大好き。
「朝は4本、昼は2本、夜は3本足の動物」答え人間ってのを解いて、神託どおり父を殺し母と結婚したのがオイディプスやね。
本来異なる次元にあるはずの二つのものを、急激に結びつけるのが、謎々であり、近親相姦である。インドネシアでは、謎々のもつこうした魔力を恐れ、葬式の時だけしかなぞなぞしちゃだめらしいです。それはやはり死者と現世という離れた二つの概念を結びつけても良い日だから、でしょうね。異なるふたつのものを急速に結びつけるというのは、簡単に行われてはいけない特別な儀式なのです。
RTA走者も、バグ使ったりシステムの裏側を徹底的に洗い出して、最短経路でゴールしてしまおうってことやからね。
RTA走者の態度の厳かさは、ある種の儀式性を孕んでいる気もしますね。そして橘もまた、恋愛RTA走者です。
本来アマガミというゲームは、かなりちまちまイベントを実行して、このイベント大事そうだなとかこっちは後回しでいいか、とか判断して、ヒロインとゴールインするまでしこしこプレイせなあきません。
でもアニメではたった4話で、出会いから恋愛関係、そしてハッピーエンドまでを描く。当然、動きは無駄がなく、洗練されたものになります。
いや、おもっくそ薫のレスラー姿のジャーマンスープレックスとか、裸ワイシャツとか、和服とか妄想してますけど。こんなんゲームにもないですけど。
それは、あれですよね、薫との関係性を短絡的エロで解決して満足しようという、オイディプス的短絡性を表現しつつ、もちろんそれはサクッと頓挫する。しかし一見関係なさそうなエロ妄想シーンを挟む緩急により結果的に物語の進行がスムーズになってるんですよ。一見回り道と思われていた方法からRTAに思わぬ新手法があみ出されていくんです。
まあRTAとオイディプス的短絡はひとつの主張としておこうか。アニメの橘は確かに恋愛RTA走者やわ。あと、このシーンみたいな橘のエロの先走りが、しばしば橘とヒロインの関係性の発展に寄与していることに着目したい。つまりここでの橘の妄想に加えて、膝裏にキスとか、眉毛にキスとか、へそにキスとかがなぜ物語の進行に必要か、ってことやね。他者の欲望を想像することが性的関係の基本原理だと小説家・桐野夏生氏、そして批評家斉藤環氏は明らかにしていました。橘の性的人間性については後々まとめてみたい。関係の6象限、あるいは8象限という形でのアマガミネットワーク、もといアマガミコンピューターの強度についてですね。尺が余るだろう中多編などで詳しく書くと思います。
校舎裏での薫を妄想して奇声を発しているところを、ひびきに注意される。

アレを母親に見られるエロガキみたいになってしまいました。
放課後の薫との約束のことにすっかり頭を奪われる橘。


ファッキン童貞の面構えですね。
童貞臭を出した後はどうなるか、もうお分かりですね。
るんるんで校舎裏に向かう橘が、梨穂子にぶつかる。梨穂子の手を取る橘。





毎度恒例、梨穂子の童貞臭ファブリーズです。
橘がキモい時には梨穂子が来て元に戻してくれる。もはや水戸黄門の紋所並みに定番のパターンと化していますね。
森島編では、初回で森島に大食いくん呼ばわりされた後(r1-1)、第二章で図書館に行った時のダイエット本当て(r2-2)、最終章で一緒にお出かけ(r4-3)などで、純一の梨穂子との積極的な会話シーンが挟まれていました。そしてどれもが、橘の非モテ感を払拭する触媒的な役割を果たしています。
clavis氏は、ヒロイン回以外での他のキャラとの絡みをまとめたいとおっしゃっていました。自分もまとめきろうとは思いますが、一番自分の回以外ではっきりと役割を果たしているのは、梨穂子で間違いないやろね。
梨穂子の御加護あってこそのアマガミといっても過言ではない。
感謝。
シーン11
薫から告白されるかと期待して校舎裏に向かうも、そこにいたのは薫と恵子だった。
落胆して拗ねる純一。
人を振り回す薫に辟易して共感する恵子と純一、そんな二人の様子が気に食わない薫。





ここで拗ねてるのは正直でえらいと思います。
下手にかっこつけられても困るんよな。「ま、告白じゃないと思ってたけどな、流石に」みたいに自己合理化しちゃうと、橘のキモさは表面上バレずに完全性は保たれるかもしれんが、世界が閉じたまま。物語が進まない。
やっぱり直前に梨穂子に禊してもらってるのが効いてるんですよ。あそこでキモさを捨てて素直さへと昇華した。だから薫に告白されなくて素直に拗ねられる。その態度の率直さが、恵子に拾ってもらえた。
まあちなみに、実は恵子は純一に脈あるんですけどね。ちょっとおまけ劇場でわかります。
「主人公は相変らず唐変木で、なぜか我々が優越感を得る。」これがアマガミの観客の得るカタルシスです。橘がトラウマを負って地に堕ちた神であり、その神性を取り戻していく過程でヒロインと結ばれ、それを見た視聴者は自分も神性を取り戻すことで同じように成功体験ができるのではないかとワクワクする。
そして神性を取り戻すための作法として素直さが必要だと。
変態紳士たる所作は、カッコつけてない等身大の発想力でありながら、欲望に素直であることが前提にあると思います。この正直さが奇想天外さを成立させていると思います。
シーン12
校舎の外観から3人の校舎裏へ上から下へのフレーム移動。
付き合うならキスさせろと言われた恵子に、手紙を出してみればとアドバイスする純一。真剣に考える純一を見直す薫。


表情がええですね。
薫回はとにかく絵の動きがいいです。
シーン13
風力発電機。二人で帰る放課後。


シーン14
横断歩道。(二人を遠くから見つける美也と中多)






風が!!吹く!!髪を!!なびかせる!!心が!!揺れ動く!!!!これが!!恋!!
良いシーンでした。ランキング上位に入ります。悪友どまりだったはずの二人の関係を変えたのは、告白されるのかもという橘の妄想のおかげでした。やっぱあの裸ワイシャツの妄想とか無駄じゃなかったんですね。
それを引き起こしたのは、元はと言えば薫のパンチやったな。頭いい具合にいかれさせたんやね。二人の均衡を破ったのはパンチ、そしてパンチラ。
物語の歯車がうまく回り出しました。でもそもそも薫の恋愛動機はなんでしょう。なぜ、恋愛したいという状態にあったのか。物語の中では明かされません。まず、やはり家庭環境のことから、意識的にか無意識的にかはわかりませんが、頼れる人を探している部分はあると思います。薫本人は自分ひとりでもどうにかやっていけると頑張ってバイトなどしていますけれども、やはり人一倍孤独や寂しさは抱えているはず。薫の八卦もそれを示していますね。
そして、薫もまた、橘が梅原としていたのと同様、「クリスマス頑張ってみようかな」と恵子と話していたのではないかとも推測されます。
単なる推測でしかないにせよ、こういう発想で薫の言動や動機を捉えていくことが、色々と自由度の高い薫回の醍醐味ではないかと思います。
あととにかく普通に情景とテンポがええわ。特に薫回は素晴らしい。無理に言語化せんでもええと思う。みよ。普通に。特に人があんま映ってないシーンよく見よ。
美也と中多はたびたび橘とヒロインを発見します。別に直接関わるわけでもないのに発券するのには、もちろん意味はある。森島編でも、プロレスをする森島と橘を発見してました。そして発見すると、森島編でも今回の薫編でも、美也が中多に橘を見せないようにする。
タイミングとしては橘の神性の高まりを予感させる頃にしばしば中多は登場します。中多は橘を見てしまうと一目惚れしてしまうので、他のヒロインとの進展の邪魔にならないように美也は中多を遠ざけますね。
梨穂子の場合はというと、直接橘に接触し橘の見せ場を作ってサポートしてくれる。一方、中多は遠くから間接的に橘の神性の高まりを示すことが多い。
例外として、森島編第一話では、直接接触して橘にパン買ってもらってましたが、あれは基本美也とユニットで動いているはずの中多が一人でいる結構例外的なシーンでした。なぜでしょうね。
橘にあらかじめ惚れておく必要があったからやね。
アニメアマガミSSでは、各ヒロインをオムニバス形式で4話ずつ描いていく。中多編では、もともとは面識がなかったはずの橘に、結構初めからがっつり惚れている。その導入となるシーンをどうしても他ヒロインのパートでやっとかないと、なんでこの子こんなに主人公のこと好きなん?ってなってしまう。それを回避したい。
中多は橘を見ると好きになっちゃう。ただ、中多パートでの整合性を考えて一旦中多に橘のことを好きにさせておく必要があったので第一話では単独で接触させた。以降は、他ヒロインパートでは遠くから橘に接近し、橘の神性の高まりを示すアイコンとなる。しかしそこでも、実際に見てしまうと惚れてしまって進行の妨げになるので、毎度美也が中多を純一からそらす。というわけやな。
そして、こうして美也は中多の視覚を支配する一種の主従関係を持っている。それがなぜ可能かというと、中多紗江は、美也が生み出した願いの結晶だからではないかと我々は考えているわけです。本当はカッコいいにぃにのことを、好きになってくれる女の子が現れてほしいという、美也のせつなる願いの結晶。そして、中多はアマガミ世界の外部からやってきた転校生でもある。
美也は中多のふかふかボディをご利益の対象として拝んでいたりもします。のびたとドラえもんよろしく、美也にとって中多は一種の外来神の形態であることは間違いなさそうやな。
純一の言葉でなぜかドキドキしている自分に気づく薫。バイトを頑張って気を紛らわそうとするも、純一はバイト先に遊びに来ていた。
気丈に振る舞うも、橘のことを意識指定しまう薫。昼間のパンチは、実は橘へのヤキモチだった?







橘は一体何をやっとるんかね。
金持ってないし、薫の仕事の邪魔するし、何しに来たんですかね。
パンツ覗くならしっかりと覗けよな。
そこですか。
しかし、薫はもう既に恋するをとめなので、橘のストーキングも全然嫌悪しません。どころか、顔が赤くなってしまう。かわいい。ほんとに。
そして昼間の教室での出来事を回想しています。薫は、絢辻の肩を持った純一にムッとして殴りかかった。あれは、ただなんとなくのつもりだったけど、考え直すと、橘へのヤキモチだったのではないか、と。
薫は橘を殴った後、反省して保健室で可愛くしょげてましたよね。あれは、単に反省していた表情ではなかったわけやな。
いや、一連のことは、ただムッとして殴った、けどやりすぎてしまったと反省している、と意味づけして終わらせることもできました。でも、薫は、それ以上の意味を見出してしまった。遡及的に、それらの行為が橘への好意を意味し出してしまった。そうすると、もう元の意味には戻らなくなった。これはね、繊細で巧妙ながら、まさしく恋の現象を鋭く表現してるんじゃないかなと思います。
行動自体は一緒でも、捉え方が変わることで、その意味が変わってしまう。恋によって、いかなる行動の中にも、橘への好意を見出し始めてしまう。
第一章、アクユウはこれにて完結。次回は悪友関係から一歩踏み出す二人の「トマドイ」。デュエルスタンバイ。

うひょう!!
EDは皆んな裸にならざるを得ないみたいです。
次回
「トマドイ」
今週のお題「地元自慢」
参考
https://clavis.info/wiki/amagami_ss_04_a
アマガミSS第三話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/19/022527
柳田國男です。
折口信夫です。
南方熊楠です。
最終回なのでまた呼んじゃいました。
またですか。
お久しぶりやね、宿直くん。
釈迢空です。
1年前(橘高1)のクリスマス、森島と橘は丘の上公園で出会っていた。

OP
アバンタイトル。既に出会っていた二人。
アバンギャルド(前衛的)とかと同じ、前、を意味するフランス語ですね。アニメやドラマのOP前の部分などをアバンタイトルという。
そして今回も二人のアバンチュールいうわけですね。
ad(〜に)、vent(神が来る)。クリスマスをカウントダウンして神の到来を待つアドベントカレンダーなんてあるしね。
橘と森島が一番冒険してるのでアバンチュールって響きも似合ってますね。ともあれ1年前に二人は既に出会っていた。クリスマスに。丘の上公園で。
ジャンプ漫画じゃん!1年後のクリスマス、丘の上公園で!
帰ってもらっていいですか。
下校時刻。先輩を待つのを諦め、梨穂子と美也の買い物に付き合うことに。

シーン3
風力発電機、店、ウィンドウショッピングする様子。今年のクリスマスの予定は?今年は僕だって、と息巻く橘と、それに小さく「ふぇ?」と反応する梨穂子。
橘が森島をほっぽって他の女の子と遊ぶ。他のヒロインのエピソードとは異色な回り道です。しかも最終章である第4話で。
彼がまだはるかとゴールしてないと思っているからですね。この後の公園でのやりとりや、ホテル内での回想でも明らかになります。橘はトラウマと向き合って2回告白した。眉毛にキスしてもらった。この時点で橘は一皮剥けてるんです。神としては復活している。橘の成長物語としては完結している。だから梨穂子と美也との絡みも自然になった。モテがモテを呼ぶ的な自然体さです。執着がない。
でも神性を取り戻したはいいけど、この後森島と結ばれるには何が足りんの?
そこで登場するのがオノゴロ島ですね。続きを見ていきます。
ゲームセンターでクレーンゲームする先輩を発見。トイレと偽って買い物離脱。

シーン5
クマにアテレコ。(熊と同化=神と同化)偶然にもクマのキーホルダーゲット(熊狩)。




取れたクマ。
犬に散々導かれてきた二人ですが、ここでは熊を狩る。
熊狩りですね。熊は人類が最初に神と認識した動物であり、熊を狩ることは、肉や毛皮を得るといった表の意味をはるかに超えた、神聖な儀式そのものだった。橘が取り戻した神の力の高まりを示す場面であります。
熊狩りについては数々の神話があります。なぜならば、熊はその圧倒的な野生の力から、神と捉えられていたから。そして、人間は毛皮と食料のために熊狩をしなければならず、この神聖な動物を殺戮しなければいけない実存的問題の解決のために、神話的思考を用いたからですね。
狩りの神話についてはトンプソンインディアンの、山羊の妻をもつ青年の話などがわかりやすいですが、詳細を書くと流れがあまりに逸脱するので簡単に結論だけ書きます。
山羊=女性が人間の妻になるが、最後は山羊社会に戻っていく。山羊側は、結婚しておきながら夫である人間を置き去りにするので、人間に負債を負う形になる。この負債、貸しがあるからこそ、人間は山羊を狩ることができる。そして狩りの際、山羊の魂はもとの住処に戻るので、人間の狩り行為もまた、有意義なものであるのだ。とただの狩りを神話化して、人々は動物殺しを受け入れていくわけです。
熊狩りも同様。つまり狩りとは一見身勝手な命の強奪なので、神話的な思考によって、神聖な儀式にして、命を大事にしよう、それによって物質的にだけでなく、精神的に豊かになろう、ちゅう模索なわけやね。
魚の骨を綺麗に残すとか、現代でもそういう作法は細部に生きています。神は細部に宿るということです。
橘が熊のキーホルダーを取れたのは、トラウマと向き合って告白し、先輩の禁忌に接近していく、その所作の正しさがあったからこそです。
橘は神の世界の住人でした。しかしアマガミ世界の創設者=主人公として持っていた唯一神的な性格は、クリスマスのトラウマによって不完全となり、現世に放り出された。その際、異界と輝日東の連絡通路である押し入れプラネタリウムという空間を通過しました。実存の問題に直面した時は、たびたび、このプラネタリウムに籠る。星の見えない輝日東で、星を眺めることで、野生の心を思い出す。無意識の声に耳を傾ける。対称性の思考を磨く。
冬眠ですね。ドリームタイムともいう。
無意識の思考、夢の思考は、普段の言葉とは違う高次元な世界にそのまま触れることができる。そこはA=notAが成立する、圧倒的な対称性の空間です。あるいは子宮、宇宙。こうした高次元空間で、未熟な魂に戻り、感性を取り戻すことで、橘は、神通力を高めることができた。そして、はるかに告白し、2回目の告白をし、熊のキーホルダーをゲットし、と着実に神聖な狩りを丁寧に進めていくことができたわけです。
ゲームセンター内へ。ゲーセンの名前は「LUNA」月。
相性占いのゲームで、MHでは30%と振るわず、むくれるはるか。LHに変えたところ95%のマッチ率。LHのLとは、はるかのミドルネーム、ラブリーのことだった。


森島編では、1回目は物事の表面だけしかなぞられず、2回目に初めて真実が語られるというのが一貫したテーマになっています。
列挙してみると
・2年前のすっぽかしにより、橘はクリスマスのトラウマを負う→はるかの魔力に心を掴まれて、また頑張ってみようかな、と決意
・1回目の告白はダメ(橘が自らのトラウマ解消のため、恋愛を取り戻すために、憧れの対象として学園のマドンナである先輩を利用しただけだったから。)→2回目の告白はOK(トラウマや恋愛を取り戻すためでなく、先輩のことが好きで告白したから。→はるか「またね!」)
(・もう一度眉毛にキスしてほしい...)
(・もう一度膝の裏にキスさせてください!)
・1回目に学校で接触した時はただの大食いくん→その後響の前で橘は自己紹介
・1回目に丘の上公園で会った時はただの公園くん→丘の上公園にて、橘が公園くんだったと、アイデンティティの一致
・はじめは「森島はるか(学園のマドンナ)」→本当は「森島ラブリーはるか」
・純一視点、丘の上公園にて、2年前のクリスマスはすっぽかし(無)、1年前のクリスマスははるか(有=オノゴロ島、生誕の兆し)
・1年前のクリスマスは先輩に声をかけてもらって救われた。→今年もまたデートして僕を救ってくれませんか?(ダメ→家族のパーティーに参加で実質OK)
・はるか視点、丘の上公園にて、1年前のクリスマスはジョンの死(無)→純一(有=公園くん→恋の相手、橘純一)
・はるかが純一の手を引いてプールへ→純一が提案して図書館へ
・はるかが純一の袖を掴んで下駄箱へ→純一がはるかの手を引いてポンプ小屋へ
・(この後の話)1年前に会った時は海の向こうの島が見えた→今は島は見えないが、海に沈む太陽が見える。
・はるかが純一の手を引いてホテルへ→純一がはるかの手を引いてエレベーターへ
・橘の告白→森島の告白
など。徹頭徹尾、反復が描かれ、しかしそこに何かが生まれていく。
そしてここでははるかの真の名前が明かされました。狩猟神、処女神、豊穣神であるアルテミスの月の場所で、エロース=キューピッドの神託を受ける。そこで真の名前を用いたことで、神託は俗世のトラウマを超えた神としての二人の相性が抜群であることを予言しました。
橘からはるかを誘い、丘の上公園へ。風が吹く。
一年前のクリスマスの日に実はこの公園で会っていたことを話す。するとはるかはその日のことを印象深く覚えていて、あの日の公園君はキミだったのかと合点する。


シーン8
ベンチに座る。はるかのクリスマスのトラウマを知る。純一も自身のクリスマスのトラウマを明かす。デートの約束だったと知って少し焦っているはるか。


シーン9
はるかをクリスマスデートに気味悪い誘い方をするも断られる。デートは無理だけど代わりに家族のパーティーがあるから来て欲しいと言われ橘は快諾する。




これがオノゴロ島であることは間違い無いでしょう。以下にエピソードを引用します。
イザナギノミコト(男神)とイザナミノミコト(女神)が、国生みの際に、「天野浮橋(あまのうきはし:天と地を結ぶ宙へ浮く橋。神はこの橋を渡って地へ降りるとされる。)」に立ち、天の沼矛(ぬぼこ)をまだ何も出来ていない海原に下ろし、「こをろこをろ」とかき回し矛を持ち上げると、滴り落ちた潮が積もり重なって島となった。これがオノゴロ島である。
オノゴロ島に降りた2神は「天の御柱(みはしら)」と「八尋殿(やひろどの:広大な殿舎)」を見立て、イザナギノミコトは左回りにイザナミノミコトは右回りに天の御柱を巡り、出会った所で相手の魅力を褒めあい、この島で成婚する。
二人が結婚することの暗示であり、二人が神であること、この地に堕ちてきた存在であることの暗示でもある。そして輝日東が神が国生みの際に降り立つ場所であることも示している。さらに、右回りと左回りは、純一とはるかの相補的ニ元構造をもつユニットであることも示しています。神話は二項操作を思考の最小ユニットにすることはすでにお話ししました。それは現代の私たちのコンピューターと全く同じ性質を有している。上記に列挙した、二人の繰り返しの行動は、「0と1」「真と偽」それによって世界そのものを規律しようとしていたともいえるでしょう。
このはるかと橘の二人に限らず、結婚ていうのは本来昔からこういうもんなんやろね。異質の受容、相補的ゆえの化学反応。価値観が同じ人がいいだの、港区的パパ活の延長だの、変なのもありますが。
森島はるか、その名前そのものが二人の神話のタイトルのようでもあります。
この島は一年前のクリスマス、共にクリスマスにトラウマを負った神二人の道標だった。クリスマスに地に降りた二人の神が、再び出会い、国を産むための道標。
繰り返しになりますが、橘は二年前のクリスマスにデートをすっぽかされてアマガミ世界を創設した神であるが、トラウマによってその力は不完全なものとなっている(トラウマを無秩序に破壊して神として暴走し複数のヒロインと関係を持つこともできる=スキBAD)。一方、はるかは、天真爛漫さ、無尽蔵の美で、人を巻き込み思い通りに楽しむ神であるが、恋愛については禁忌として抑圧する不完全さを孕んでいた。(この力を暴走させると、冷酷な権力者に成り果てていく=スキBAD)また、飼い犬であるジョンがクリスマスに死んだこともクリスマスのトラウマとしてはるかの心に残っていた。彼女はジョンの死を目の当たりにすることで、自身の美や天真爛漫さ、花の命が、決して永遠でないことについて自覚するきっかけになったかもしれない。基本的にアニメやゲームのキャラは無限に生き続けることができますからね。サザエさん理論でね。ですが森島は作中で唯一、あえて「死」という確定的な断絶を目の当たりにするキャラでありました。
そしてそんなジョンの存在は橘と出会うきっかけにもなった。dog=godというのも言葉遊びですが(語源的に関係はない、関係については詳細に調べる余地あり)、橘とはるかという二人の神を媒介する共通的で両義的な項としてふさわしい存在といえますね。
遅刻して走る純一。
シーン11
噴水、クリスマスツリー、カップル、駅前のロータリー。
シーン12
白いコートのはるか。頭から湯気を出して場を和ませる。


シーン13
ホテルへ。はるかが純一の手を引いて入る。はるかの「家族に会う前にひと汗流す」、とは。驚く純一。

汗を流す、とは、ホテルのプールで泳ぐことだった。(冬の水着回)
新しい水着のはるか、見惚れる純一、後ろでデブがスライダー入水。




シーン15
視線のやり場に困りプールに飛び込む純一。後を追うはるか。存分に楽しむ様子。




シーン16
二人でプールサイドに腰掛ける。多幸感でぼんやりする純一に、他の女の子見るなと注意するはるか。否定する純一。

シーン17
サウナ。二人の汗が混ざりあってひとつになる。

2話ではスクール水着に着替えるところまでいけましたが、七咲に足止めされ、響に見つかって追い出され泳げずじまいでした。しかし今回は思いっきり泳ぐ。
なぜはるかは水に入れたのか。それは3話のイニシエーションを通じて、橘が響から水の守り神としての継承を得たからです。
橘が水をコントロールする能力を継承した証拠に、橘は湯気を出して遅刻の局面を切り抜けとるね。サウナでも汗をいっぱい出して先輩と一つになるきっかけを作っている。
それは普通に生理現象じゃないでしょうか。
ひびきから森島の保護者としての立場を継承したということ。それは、はるかという刹那的ゆえに無尽蔵の美に、永遠を与えることができる立場になったということ。犬のジョンにはできなかったことやね。
唯一神ではなく、クリスマスのトラウマを負って地に堕ちた一人の人間として、対称性の原理を身につけることができた。それによって神性を回復し、さらに魅力的になることができました。橘が先に飛び込んだのを見て、はるかも安心してプールに飛び込むことができました。
ああ、楽しそうや、、
プール上がり。ホテルのロビーで水を飲む純一。はるかが合流。森島の家族との待ち合わせ時間を過ぎていることが発覚。

シーン19
(ホテルの外観のカット)純一がはるかの手を引いてエレベーターに乗り込む。
(夜景にときめくはるかと、高所恐怖症の純一)


真実のデートが始まりました。
ここでの家族との約束の話は全てひっかけでした。そもそもクリスマスで家族パーティーするとは言ったもののイブとは言ってない。わざわざホテルでパーティーする理由もないし、森島のリアクションは普段からホテルでパーティーしてるにしてははしゃぎすぎている。家族のパーティーをダシにして橘をテストしつつ、二人きりになるチャンスを作ったと。
この作戦は響ちゃんと画策したのかも。
目的階へ到達。部屋へ。夜景にはしゃぐはるか。豪華な風呂場に大喜び。
シーン21
のぞいちゃだめよ、と言い残し風呂場にこもるはるか。のぞきませんよ!と約束した純一はソファで先輩とのこれまでやこれからについて考える。


シーン22
クリスマスツリー。創設祭。おでんを食べる薫。ひびきが「今頃あの子も頑張ってるかしら」とおもいを馳せる。絢辻が空を見る。雪が降ってくる。

シーン23
再びホテル。電気が消える。タオル姿のままやってくるはるか。
どうしてのぞきに来てくれないのよ?



覗けって言われてたよね?
覗くなって言ってたんですよ。大丈夫ですか。
森島編を通じた水のモチーフについて改めてまとめます。

・2年前のクリスマス。雪。
・噴水をみるはるか。
・プールに行きたがるはるか。スク水をゲットするも響に止められ泳げず。
(・水の守護者である響)
・眉毛にキス
・ポンプ小屋へ
・膝裏にキス(通行止め)
・ラーメン(手足は拘束の設定)
・橘のクリスマスデートの約束を知った汗(はるか)
・橘がデートに遅れそうで発した汗
・頭から湯気
・駅前の噴水
・ホテルのプール
・スライダーの水飛沫、小、大
・プール遊び(ついに水に入るはるか)
・サウナで汗がひとつに混ざり合う
・ペットボトルの水を飲む純一
・トイレも立派(ホテルの部屋)
・浴槽(湯はためてあるが、入らない)
・屋台のおでん
・雪
・はるかの涙
・スープの出汁(エピローグ)
clavis氏ははるか自身を水の神、天つ神としていましたが、私は彼女は花であり、有限であり、無限であるがゆえに溺れて帰って来れなくなる水に対して、強い憧れと恐れを抱いている存在と考えています。
はるかは一人では泳げない。学校のプールに行く時も橘をわざわざ連れてきたり、ホテルのプールで自分から入ったりはしなかったり、浴槽においても入ることはありません。
水の守護者の導きが必要となる。かつては響がそれを担当していた。
しかし、ポンプ小屋への冒険を経て、橘は死後の世界とのネットワークを獲得した。対称性の力を手にし、無限の強度に耐えうる心身を獲得した。水の守護者となる資格を得た。ひびきからその地位を継承した。
なんか村上春樹の新潮文庫の小説も大体そんな感じよな。たとえば騎士団長殺しでは、二重メタファーに食われかけるけど見えない世界の水飲んでたから大丈夫でしたっつって、井戸から現世に戻ってくる。
イニシエーションをくぐり抜けた橘は、有限で脆いはるかに永遠を与える。与える存在だから、切迫感はない。しかし一方ではるかは、水を失うのが怖い。
恋愛においては、好みのタイプである純一をわざとフってしまうほどに奥手だった。でも、なんとか、ホテルの部屋まで来てもらうことができた。しかしそこから先、どうすればいいのかわからない。恋愛しない禁忌はとっくに捨てたけど、身軽になった今、レンアイの仕方がわからない。
そこで密儀ですね。そして見るなのタブー。
橘は水の守護者としての立場を得ているので、覗く資格はあったように思えます。少なくとも、イザナギがイザナミを見て激怒され、黄泉の国で離婚したような形にはならないだろう。と願いたい。
密儀というのは例えばレレ族のアリクイ食べとかね。ウィチョル族のペヨーテ狩りとかでしょう。αにしてω。
でもこういう密儀調べたらわかるんですが本当は密儀って男性的なものなんですよね。はるかが一人の人間レベルの女性性を超えて、父性的な側面を有する圧倒的な一個の唯一神であることがわかります。そしてその唯一神性は権力と相性がいいという話も散々してきました。
密儀とはつまり、恋愛を禁忌にし神としての完全性を失っていた彼女が、完全性を回復する(新たな完全性を獲得する)ための儀式ということでしょう。つまり橘が押し入れプラネタリウムでやってたようなことと相似。ドリームタイム。走馬灯。
たとえばこんなことを考えてたんじゃないかと思います。
どんな人にも愛嬌を振り撒き、場の注目を集め、思い通り楽しく生きることができる自分。だけど、人を傷つけるし自分が傷つくから、響の教え通り、恋愛については禁忌。のはずだった。そこに橘くんが現れた。初めの告白は、ちょっとだけかっこよかったけど、ドキドキはしなかった。好きなタイプを適当に言って誤魔化した。タイプだけど、恋愛はできないかな。でも、友達として仲良くできたらいいかな...。
そう思っていたら、もう一回告白してくれた。なんで。初めてこんなにドキドキしてる。ええい、恋愛への禁忌を、今ここで、捨て去ろう。眉毛にキスしてあげちゃった。一緒にポンプ小屋に冒険した。ラーメンを刺激的に食べた。なんでこんなに楽しいんだろう。なんでこんなに幸せなんだろう。こんな時間がずっと続けばいいのに。でも、橘くんはいつまで私のこと好きでいてくれるかはわからない。もう卒業も近い。見違えるくらいどんどんかっこよくなる橘くんのことを他の誰かに取られたらどうしよう。レンアイってどうすればいいの。ずっと禁忌にしてたから、なにもわからない。クリスマス、ホテルに誘い込むことはできた。でもこれからどうすればいいの?告白なんてしたことないし。自分の思い通り楽しんできて、告白もたくさんされてきたけど、自分から思いを伝えるってこんなにむずかしいの。でもみっともないって思われたくないよ。
だけどやっぱり橘くんのことが好き。
と。
密儀の中で感覚を研ぎ澄ましてるはるかのことを、純一は教えを守って覗かなかった。結果的にはそれは正解だったかもしれないな。
彼女は朽ち果てた姿を見られる恐れがあった。もしくは未熟な姿を。恋愛がうまくできない自分。人のことを散々振り回しておいて、本当に好きな人を振り向かせる方法はわからない自分。そんな情けない自分を曝け出すのが怖かった。
もし覗いていたら、こらーってなって、その場は盛り上がるかもしれないけど、なんか、その後よそよそしくなる可能性もありそうで怖い。
はるかは自分で密議に終止符を打ち、タオルの一張羅で出てきました。
最後のベールですね。
第二話の図書館では、橘が上着をかけてあげた。それをはるかが脱ぎ捨てて、純一の眉毛にキスをした。この時、純一の方は、好きでいていいですか?と聞くことしかできなかった。それこそが等身大で尊かったわけですけれどね。それが成功して、先輩のことを好きでいて良いと承認は得たし、眉毛にキスしてもらった。そこでもうお互い好き同士ではあるっぽいけど、あと一歩進むことが思い描けない。好き同士だけど彼氏彼女ではない。
橘は、先輩のことを好きでいて良いという段階にあるだけ。そんな不安定な関係だから、第4章でも純一は、梨穂子たちと買い物に行ったりもするし、はるかを連れ出すのにいちいち緊張してるし、クリスマスデートの誘いもヘンテコになる。
はるかも、眉毛にキスしたし、思いっきりごろにゃーんと甘えたし、恋愛をしない禁忌は捨て、もう橘のことが好きである。なのにそこから先に進めない。
実質的な状態を見ればもう好き同士なんやけど、その矢印がうまく噛み合っていない。
なぜ噛み合わなかったか。橘の方は、一旦やるべきことは達成しているのです。トラウマを乗り越えて告白した上、好きな先輩のことを、好きでいて良いと言われたのだから。だから三回目の告白をしようとは思い立たない。ですが、はるかの側は、物足りない。もう好きなのに、この好意の保留状態から動けないでいるから。本当の好き同士になるためのもう一段階の試練が、ベールとして残っていた。
この好意の保留状態を作り出したのが、橘の「好きでいていいですか?」でした。だから、第二話ではあくまで橘がかけた上着を、はるかが脱ぎ去ったにすぎなかった。その「第一のベール」を脱ぎ去った行為は、橘のトラウマの克服と、はるかの禁忌からの解放を意味したが、それを経ても、まだ二人は仮の「レンアイ」状態にしかなく、真の恋愛へ至るためのもう一段階が残っていた。それが上着を脱ぎ去った下に残っていた「第二(最後)のベール」として表現された。
最後のベールがまだ残っている証拠として、ホテルのプールでも、サウナでも、限りなく裸には近いけれども、まだ水着1枚介している。混じり合った汗も、床におちて散る。二人は一つにはなれていない。
そこではるかは最後のベールを破るために、タオル一枚で登場した。
恋愛をしてはいけないという禁忌自体は第二話の最後、図書館で既に破った。それは橘の上着を脱ぎ去ったことで表現されました。しかし、好き同士ではあるのに、まだ恋愛にならない。橘と形式を超えてひとつになるにはどうすればいいのか?もうひとつのベールを脱ぐには?「好きでいていいですか?うん。」という図式ではなくて、「好きだよ。私も好き!」ってなるにはどうしたらいいのか?簡単なようでいて深い断絶がある。命懸けの跳躍が必要になる。
はるかが募った思いを爆発させ、泣く。はるかの肩を純一が抱く。
二人の影が重なり、はるかが純一に頭を預ける。純一がはるかの思いをうけとめる。




シーン25
はるかって呼んで。いつまでも先輩じゃ嫌。呼んでくれたら、もう泣かないから。
抱きしめる。キス


「はるか」「...よくできました」「好きだよ。ずっとずっと一緒にいたい」「私も好きよ。......大好き!」



シーン26
イルミネーション、雪
泣けば、いいと思うよ。
ついにはるかの思いの丈が溢れたね。橘の二回目の告白は、人生で初めて告白でドキドキした。でも、橘君のかっこよさに見合うだけの告白をどうしたらいいかわからなかった。君に飽きられないか、見捨てられないか、不安だった。
はるかちゃんの等身大の告白です。高嶺の花で、男殺しの天然女王で、無敵の恋愛女王と思われていたはるかが、壊れそうになりながらも、大事に温めて守ってきた恋心。
はるかって呼んで。いつまでも先輩じゃ嫌。
そして、二人を隔つ最後のベールがなくなります。お互いがお互いを好きであること。留保付の好意の保存ではなく、今、そしてこれからずっと好きであるというスピリットの躍動。
10年後。料理を味見するはるか。味わう響。刑事ごっこで登場する純一。ラブラブの二人。

想像通りのラブラブ夫婦になったな。
ちなみに、ちょっとおまけ劇場(公式のプチ続編)では、二人はこのクリスマスを経て、公式に校内を代表するバカップルになります。
誰もが認めるバカップルです。先輩のことを射止めた橘の努力や、先輩の以前にも増した神々しさが、一層際立ち、皆んなが納得している。そういう空気が感じられるので、ちょっとおまけ劇場は必見です。世界観を全然崩してない。
ちょおま劇場はどれも素晴らしいです。対して、アマガミSSの続編であるアマガミSS+については、必見ではないです。
なるほど、アマガミSS、やはり驚くべき素晴らしい作品ですわ。僕が粘菌に没頭したのも、高次元で対称的な性質に惹かれたからだった。アマガミにはある種粘菌性を感じますね。
・アマガミ世界の創設者にして唯一神(天皇的純一と、都としての美也)。トラウマを持った不完全な神として地に堕ちる貴種流離。行動の中で対称性を取り戻して神性を回復してヒロインと物語を作る。
・押し入れプラネタリウム。子宮、宇宙。高次元対称空間で感性を研ぎ澄まして、神通力を高める。熊狩りとドリームタイム。
・無限、永遠を象徴する水の守り神、響。水に憧れる有限の花、はるか。
・トラウマをもち恋愛を禁忌とする不完全な神二人の邂逅。
・二度目に真実が語られる。0と1。真と偽。二項論理。神話からコンピューターまで、世界を記述するための現生人類の思考法そのもの。
・橘の、永遠への強度を手に入れるためのイニシエーション。死の世界をくぐりぬけ、ポンプ小屋への冒険。
・禁忌を破った二人のレンアイ、そして恋愛。まずは橘の真の告白(2回目)により図書館で立花のトラウマ、森島の恋愛の禁忌という「第一のベール」を脱ぎ、森島が遅れてホテルでトラウマや禁忌を克服した上で、ただの形式的な好意の保留状態から真の恋愛関係に至るため「第二のベール」を脱いだ。
天つ神たちの織りなす物語、アマガミ。ただもんではないアニメと言えそうやね。
さて、無事はるかと結ばれました。ここから先は完全に余談みたいなものです。
この終わり方を見てデジャブを抱く方も多いとおもいますが、この終わり方はまさしくシンデレラなどでよくある「ふたりはいつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。おしまい。」です。
神と神が結ばれる神話だったので、その形式を取るのが自然でしょう。実際の神話では、星になったりして永遠性を表現するのでわざわざ「末長く幸せに暮らしました」念押しはしないものですが、アニメなので流石にいきなり星になるわけにはいきません。
とはいえどこからどうみてもハッピーエンドです。かといってウェルメイドだったかといえばそうでもない。さまざまな冒険があったし、タイムリミットをくぐり抜けた壮絶な恋だった。少しでもタイミングが合わなければ、うまくはいかなかった恋。
美也絡みで接点のある紗江、七咲。もともと仲の良い梨穂子と薫。クラスの同じ絢辻さん。これらのヒロインと違って、はるかはもともと出会うことのないはずヒロインだった。そして4話の中でも二人が顔を合わせるのはほとんどぜんぶが偶然によるものでした。
偶然性についてはclavis氏のまとめをコピペしときます。
| 回数 | 話数 | 遭遇の仕方 |
|---|---|---|
| 1 | 1話A | 通学路で偶然見かけた |
| 2 | 1話A | 食堂で偶然見られた |
| 3 | 1話A | 廊下で偶然会った |
| 4 | 1話A | 図書館で偶然会った |
| 5 | 1話B | グラウンドで偶然会った |
| 6 | 1話B | 放課後に偶然会った |
| 7 | 2話A | 保健室で偶然会った |
| 8 | 2話A | 体育館で偶然会った |
| 9 | 2話B | 登校間際に偶然会った |
| 10 | 2話B | 廊下で偶然会った |
| 11 | 3話A | 廊下で偶然会った |
| 12 | 3話B | 橘から会いに行った |
| 13 | 3話B | はるかから尾行してきた |
| 14 | 4話A | (回想: 公園で偶然会った) |
| 15 | 4話A | 道端で偶然会った |
その上、先輩は高3。卒業が控えている。ひびきの監督下で自分の禁忌と向き合えるのも今だけ。タイプの純一に告白されても、禁忌の方が強く働いて一旦は断る。年上で頼りがいのある人が好みとか言ってましたね。
どこがやねんな。ホンマに。バキバキに年下好きやないかい。
それほどまでに恋愛を知らなかったはるか。さらにクリスマスにジョンの死というトラウマを抱えている。無邪気で思い通りに人を巻き込む力がある神は、恋愛を禁忌とし、クリスマスにトラウマを背負い、輝日東に人間として舞い降りた。
時期を同じくして、クリスマスにトラウマを抱え、押し入れプラネタリウムを通じて現世に舞い降りてきた橘。二人は惹かれあい、お互いの禁忌をほどきあった。
自らのトラウマと向き合い、告白し、一度は失敗するも、軌道修正して二度目の告白を成功させる。そして膝裏のキスというイニシエーションにて、ポンプ小屋で死後の世界とのネットワークを得た。それにより水の守護者にして永遠の管理者である響からその立場の継承を受けることできた。はるかの刹那性に永遠として寄り添うことができるようになった純一。
神話と言われても全然違和感ないね。
ですのでこの二人のエンディングは、最上級に幸福といってもいいでしょう。それゆえにありふれた感じもする。幸福とはそういうものなのでしょうね。

ここで各ヒロインのエンディングを比較したいと思います。ここから怒涛のエンディングのネタバレをしていくので、未プレイ・未視聴の方は十分注意してください。
ゲームとアニメどっちも言及します。アニメは完全オリジナルは梨穂子だけなので、基本ゲームのエンディングを中心に語ります。
独自の観点からエンディングの二人の幸福度合いをtier表にしました。
tier1 森島スキBEST(=アニメ)、中多スキBEST、絢辻ナカヨシ(≒アニメ)
tier2 七咲スキBEST、薫スキBEST(=アニメ)、梨穂子スキBEST
tier3 全員のスキGOOD、梨穂子スキBAD、薫スキBAD、七咲スキBAD(≒アニメ)
森島ナカヨシ、桜井ナカヨシ(=アニメ?)、薫ナカヨシ、七咲ナカヨシ、中多ナカヨシ(≒アニメ)
tier4 森島スキBAD、絢辻スキBAD
tier5 中多スキBAD、(全員の疎遠ED)
tier6 絢辻スキBEST
順に説明してください。
ここではtier表の提示と、注目すべきtier1とtier6についてのみ主に語ります。あとあと他のヒロインのパートで繰り返し話す時もこの表を使っていくと思います。
まずtier1。神話ですね。普遍的な強度がある。中多スキBESTはストーリーの起伏があまりなく面白みという点では微妙なのが残念ですが、しっかりエピローグで懐胎するまでに至っています。
これらのtier1のエンディングがtier1たる理由はその時系列で証明されています。すなわち
はるか→10年後(アニメによれば。)
中多→数年後(妊娠中)
絢辻(ナカヨシ)→出産、子供が4歳くらい
つまりこの恋愛がそのまま二人の未来へ続いている。刹那的な恋愛にとどまっていません。
結婚なり妊娠出産なりしてると。でtier2は?
薫、梨穂子、七咲のスキBESTは、どれも幸せそうな様子ですが、時系列は数ヶ月後〜1年後くらいです。薫スキBESTでは、薫の母の再婚相手との会食に同席し、家族ぐるみでの付き合いを予感させる。梨穂子はシュークリームの中に指輪。七咲は、花火の日に橘の部屋で事に及んでいます。強度は間違いないですが、そのままずっと幸せかというと、まだまだ波乱はありそう。私たちならどんな困難でも乗り越えていける!って言っちゃえる空気感な分、逆にあるいは、別れが待っているかもしれないなと予感させます。
薫ルートとか、多分、そのまま結婚するけど、薫の両親みたいに離婚するよな。
薫の八卦は離。熱しやすく冷めやすい。ありえるでしょうね。また、梨穂子は元から純一のことが好きで、純一がいかに向き合っていくかがポイントなので、ずっと一緒にいられるかは、わからない。七咲は身体の提供が一番早いのですが、これは水から脱出したがる七咲自身の性質といえる。永遠性とはちょっと相性が悪い。
七咲は水属性ちゃうんですか。
七咲は根本では水属性じゃないと思います。むしろ本質は熱、渇きではないかと考えています。
ほう。で、tier3は?
ここは結構拮抗していて、詳細に順番を決めるのが難しいので、とりあえず二人の関係が良好に続いたものをぶちこんでいます。ざっくり言って仕舞えば、全体的に「普通の恋愛」といえるレベルのものです。形而下の説明でかたがつくものが多いので、あえてスポットライトを当てて取り上げるものは多くなさそうです。強いて言うならスキGOODは面白い。ヒロインの側からすれば、他の女と二股をかけられていたものの、無事自分が選ばれるというエンディングです。「もしかしたら自分はもう一人のヒロインに橘を取られてたかもしれない」状況にあるヒロインが、橘を自分のもとに繋ぎ止めるために、女性らしさを磨いている点が伺えたりします。特に絢辻と中多のスキGOODは興味深い。
でtier4は、絢辻と森島のスキBADか。クリスマスデートのすっぽかしをくらいつつも告白された二人が、内面をぐちゃぐちゃにされ、エピローグにて、二人が過ごした日々がなんらかの形を持ってありありと結果として現れている。もちろんエンディングとしてはハッピーではない。ということか。その下のtier5は、二人で過ごした時間がほとんど無意味だった、二人の関係が未来になんら影響しない、というレベルのものやね。
橘と過ごした時間がヒロインの人格に影響を与えた点でtier4の絢辻森島スキBADはtier5より上にしました。そしてtier6が絢辻スキBESTです。全ヒロインのエンディングの中で最も時間経過のない、「創設祭の翌日」のエンディング。
しかもこのエンディングにたどり着くためには、絢辻は手帳を燃やし、橘の日々と自分の人生を等価交換し、実行委員長をやめ、家族との仲の放棄を絶対的なものにします。
子供の頃、親にもらったクリスマスプレゼントを川に捨てた絢辻。贈与の孕む欺瞞を誰よりも敏感に察していた絢辻。しかし、だからこそ自分がサンタ(純粋贈与者)になる夢は捨てていなかった。内申のためという打算的な部分に飲み込まれてもいたけれど、創設祭実行委員長は、サンタになろうという「わたし」の思いでもあった。委員長として、等価交換の息苦しい資本主義社会で計算通り振る舞い疲弊する仮面優等生からの、解放のチャンスだった。
しかしスキBESTにおいて、彼女はサンタになれる可能性=実行委員長を捨てます。さらにはクラスメートに散々毒を吐き。しまいにはドッヂボールでハブられていじめられる。
アニメでは彼女の分裂性をうまくナカヨシendのほうに回帰させていました。アニメにおいては、絢辻は、キャラを分裂させて委員をなんとか続け、創設祭にてサンタの格好をして、擬似的にサンタになる夢は叶える。しかし、高校生や大人には好評だったものの、子供には、いくらコスプレしたってサンタではないことを見抜かれる。でもその後、橘が彼女を後ろから抱きしめて告白して、偽りの彼女すら包み込むことで、絢辻は自分を、サンタ性を取り戻す。そして、等価交換による契約ではなく、贈与の約束という形で、二人の愛を結論づけた。実にうまい処理だと思いました。
ライデインを思い出すレイドック王よろしく、ウルフレジェンドを思い出す吹雪士郎よろしく。「私」も「あたし」も、どっちも「わたし」なんだと気づくことで、サンタ性を取り戻した。だからナカヨシendは強度をもっていたわけやね。皮肉にも、手帳を燃やさないことが、委員長をやめないことが、うさぎと亀の話に耳を貸さないことが、絢辻にとって正しい道となる。
スキBESTは、着々と破綻への道を進む。橘という宿木に寄生する形で。あるいはトラウマと癒しという単純な図式に陥ってしまった結果ともいえます。
そのエンディングは、一切の将来性を排除し、創設祭の翌日のみが描かれる。恐ろしいな。
これ以上は絢辻編で語りましょう。ここではアマガミ世界におけるエンディングがどういうものか全体を比較してもらいたくて、軽く紹介するにとどめました。各ヒロインのパートにてまた詳しく述べたいと思います。とりあえず森島スキBEST(=アニメの森島編)はマジで最高です。
急に浅い。
あと個人的なことを言っておくと、好きなエンディングは
森島スキBEST、絢辻ナカヨシ、絢辻スキBEST(悲惨さの点で)
ひとつのドラマとしては薫スキBESTですね。七咲ルートは全体的に不倫ドラマ見てるみたいな背徳感があって好きです。あとはゲジゲジです。
ゲジゲジか。
四話レビューを通じて
clavis氏の内容に引っ張られすぎました。次の薫編から気をつけます。
clavis氏が1-4話のレビューで仄めかしていた、後々詳しく言及したかったであろうと予測される部分についてはなるべく気付ける限りで拾っていきたいとも思います。
よろしくお願いします。
アマガミSS第5話レビュー
ブログトップ
参考
https://clavis.info/wiki/amagami_ss_03
アマガミ第二話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/12/135334
私ね、女の子のタイプに特にこだわりはないんですけどね、唯一許せないのがね、ツクツクボーシの鳴き声やってって頼んでるのに、ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、ってやる人ね。いや、そこは、「オーシーwツクツクw オーシーwツクツクw オーシーwツクツクw シーwツクツクw アリアースw アリアースw アリアースw ジジジジジジ... 」やろがい普通に考えて。
なんの話ですか。
HUNTER×HUNTERの考察やっていきましょうか。
アマガミ第三話レビューです。
恋愛がすべての活力源となり、勉強もスポーツもうまくいく。世界がこんなにも輝いている。

シーン2
踊り場で先生から授業を熱心に受ける様子を指摘される純一。恋愛がらみと見抜かれる。そこに薫と恵子が合流。恋愛トーク。恵子にも春が来たらしい。純一が、薫もがんばれよ、と応援。


シーン3
はるかが純一の袖を掴んで連れ去る。感づく高橋先生。


この回はひたすら調子に乗ってキモい橘くんです。ですが調子に乗りまくっても特に悪いことは起こりません。
橘の本来持っていた変態紳士神の力が一気に解放されていっています。
高橋先生の「恋愛絡みかしら?」「伊達に教師やってないわよ」という大人の反応。
教室では写しまくっているのにここでは恵子を先生の頭で隠す塩梅。いないいないばあの喜び。
薫のビニール袋から明らかになる薫の昼休みの導線と、彼女の優しさ。
DVD版で修正された恵子の顔。
薫も頑張れよ!と恋愛を応援され、「あ、あんたに言われたくないわよ!」ともにょる薫。
この二人が恋愛する可能性もあると示唆しつつ、はるかを登場させるタイミング作り。ところで薫の可愛さは、アニメで最も活きていると思います。彼女はひとつの場所にとどまらない風、常に形を変える火であり、やっぱり動いている様子が一番魅力的だと感じますね。
ゲームだと自由で芸術家肌の薫が静止画の紙芝居的にしか動かないので、どうにも歯痒かった。
誰もいない下駄箱。二人の位置が柱を境に離れている。どこに行くんですか?と問う橘に対し、「忘れちゃった!もう、君のせいなんだからね。高橋先生や他の女の子たちと、あんなに楽しそうにしちゃってさ!」


シーン5
先輩のヤキモチだったことが判明し喜ぶ橘。先輩への愛をアピって解決。そしてもう一度眉毛にキスしてほしいとせがむ。
羞恥とドキドキで戸惑うはるかだが、えっちなことを考えている眉毛だからダメだと断る。そして代わりに橘くんからキスしてくれと提案。



無敵の恋愛女王と思っていた先輩からヤキモチの反応まで引き出せた。今回のタイトルはここで回収完了。そしてその後もうひとつの冒険が君を待っています。
その冒険とは、橘が森島にキスするための最適な場所に連れて行くというエスコートやね。「我ながらナイスアイディア!」「君にエスコートしてもらうの。わお!素敵!」「でもここじゃ嫌」「誰かに見られたら、キスはなし」勇者橘にクエストが発生しました。
純一がひらめいて、先輩の手をとってエスコートする。


シーン7
校内を見つからないよう移動する。
シーン8
学校を出て、フェンスの向こうへ。(ポニョのトンネル、千と千尋のトンネル、...etc 死後の世界)木漏れ日。


シーン9
ポンプ小屋へ到達。不穏なドアのカット。連れ込みに成功し満足する橘。


ポンプは、地下(死の世界)から水を汲み上げて、大地にまかれ、種を育てる。生、そして性のメタファー。
学校を出て死後の世界を冒険する中で、水(を見るの)が好きなはるかの花属性にも嬉しい給水地点やね。
ポンプは井戸の別形態であり、死後の世界と現世を媒介する通路でもある。犬夜叉なり、ドラクエなり、騎士団長殺しなり、あるいは神話ではよく登場する異界と現世の媒介項ですね。
ポンプ小屋にて。キスするために近づく橘。唇はダメよ、とはるか。やめる?やめません!君ならではってとこ。ありきたりだと気が変わっちゃうかも。(窓からの光)


シーン11
どこにキスすべきか。先輩との記憶を回想。犬の本で、犬が膝の裏を舐めている様子をフラッシュバック。「ひ、膝の裏で」


シーン12
理由を熱烈プレゼン。はるかから合格をもらう。小屋の外のカット。膝裏を向けるはるか。近づく純一。接触。



Aパート終わり
無敵と思われてた先輩は、実は恋愛を禁忌にしていた。その禁忌に接近し、眉毛にキスしてもらい、ヤキモチをやかせるほどに橘は心に入り込むことに成功した。実質はもう両思いやけど、ここから先の冒険が待っていました。
まだ魔法で犬に換えられた王女を元の姿に戻しただけです。ロンダルキアの洞窟を乗り越えてハーゴン倒さないといけません。
噴水、食堂、1年3人衆、お宝本談義の梅原たち、梨穂子と香苗、はるか不在を訝しむ響、空からの学校。

シーン14
ポンプ小屋に戻る。キスが続いている。太ももの方へ。しかし、通行止めを食らう。

シーン15
感想を聞かれ、橘は最高でした!と答える。「違うでしょ。わんちゃんの気持ち!」建前はどこいったのよ、と指摘され、あとで報告しますとその場を凌ぐ。

くぅ〜ん、と犬の鳴き真似をする橘。気持ち悪い。
このポンプ小屋への冒険をclavis氏はウラジミール・プロップの昔話の構造分析にあてはめています。
/H I\
A B C ↑ D E F G J K↓
\M N/
| A | 主人公の不幸、または欠如 |
|---|---|
| B | 不幸・欠如を解消するための手立てが提案される |
| C | 行動の開始 |
| ↑ | 主人公の出発 |
| D | 魔法の力を得るための試練 |
| E | 試練に対する主人公の反応 |
| F | 魔法の力の獲得 |
| G | 主人公の移動 |
| H | 闘争の発生 |
| I | 主人公の勝利 |
| J | 主人公に印がつけられる |
| K | 不幸・欠如の解消 |
| M | 難題の発生 |
| N | 難題の解決 |
| ↓ | 主人公の帰還 |
以下はclavis氏の引用です。Lがないのは文字が判別しにくいからでしょうか?一応、以下でもL抜きを踏襲しておきます。
(物語のあらゆる機能はAに始まってKに向かうものです。欠如の発生とその解消ですね。ではその欠如とは何か。はるかちゃんとキスがしたい、ですね。
森島はそのままではキスを拒みますが、どっかにつれてってくれれば、してもいいと提案(B)します。橘はその提案に乗る(C)。
無事に欠如を解消するためには、魔法の力が必要になります。ここでは犬の力ですね。犬からの啓示をうけ、犬になるための力です。
魔法の力を得るためには、試練に打ち勝たなければなりません(D)。それは誰にも見つからない事。そしてその魔法の力に反応がなければなりません(E)。
校舎外に出る時に、金網の穴を潜りますよね。潜る時に四つん這いになります。四つん這いというのは犬のポーズですよね。
学校から、金網の穴を潜り、学校の外に出ます。二つの世界の間を移動するわけですよね(G)。ポンプ=井戸によって世界の境が切り替わっている事が暗示される。
目的地に辿りついた時、真の闘争(H)、または難題(M)が発生します。「唇はダメよ」ってやつですね。これを解決するために、犬の力が必要になる。
まずは犬からの啓示。それから、犬になりきること。それによって膝の裏という回答(N)を出し、森島へのキスを実現(K)する事ができる。)
このポンプ小屋への冒険は数々の神話と類似体系をもつ優れた構造をもったクエストだったということですね。
類例には事欠かないのですが、そのうちのひとつとして、ここでシンデレラを見ておきましょう。シャルル・ペロー版を元にした、ディズニーの一番有名なものを一旦基準にします。本当は魔法の部分を、もっと両儀的な媒介項のオンパレードによって解決する神話版もあるのですがここでは省いておきます。
| A | 主人公の不幸、または欠如 |
|---|---|
| B | 不幸・欠如を解消するための手立てが提案される |
| C | 行動の開始 |
| ↑ | 主人公の出発 |
| D | 魔法の力を得るための試練 |
| E | 試練に対する主人公の反応 |
| F | 魔法の力の獲得 |
| G | 主人公の移動 |
| H | 闘争の発生 |
| I | 主人公の勝利 |
| J | 主人公に印がつけられる |
| K | 不幸・欠如の解消 |
| M | 難題の発生 |
| N | 難題の解決 |
| ↓ | 主人公の帰還 |
意地悪な継母や義理の姉にいじめられ、台所まわりの仕事に追いやられている主人公の不幸。(A) (台所=カマド=灰=死者と連絡できる場所です。たとえば鬼滅の刃で竈門炭治郎、竈門禰󠄀豆子がなぜ漫画史に残る主人公たりえたかということですね。)
不幸解消の手立て=舞踏会へ行き、王子様に見染められること。(B)
継母と義姉たちの理不尽な命令をクリアすれば、舞踏会にいけることになった。(C)
命令をクリアするため、行動開始。(↑)
命令を守り掃除や洗濯をこなし、ネズミや鳥たちの協力のおかげで豪華なドレスも作ってもらった。しかし、それは義姉の使わない服から借りたものだったので、怒った義姉がシンデレラのドレスをちぎってしまった。ボロボロになったドレス。このままでは舞踏会になんていけない。再度試練が訪れる。(D) (別のシンデレラ神話ではネズミや鳥だけでなくヘーゼルの枝だったり魚の骨だったりに助けられたりもします)
それに対するシンデレラの反応。別に舞踏会なんて行きたくないわ。舞踏会なんて、きっととっても退屈で、、、、、とっても素敵なんでしょうね。そして、涙する。(E)
理不尽な継母たちの扱きに耐え抜いて、健気に生きてきた彼女の、心の底からの素直な気持ち。応援するネズミたち。(ネズミは床の裏や地下にいるパラサイト動物であり、死の世界の動物です。ポンプ、井戸的な、生と死の両義的な媒介項としての役割をもっていますね。)
その美しい想いが魔法となり、フェアリーゴッドマザーが登場する。
フェアリーゴッドマザーは、かぼちゃを馬車に、ネズミたちを馬に変え、ぼろぼろになってしまったドレスを美しい純白のドレスに変え、シンデレラの足にはガラスの靴が(F)
シンデレラは馬車に乗って舞踏会へ。(G)
誰が王子と踊るか(H)
王子はシンデレラに一目惚れし、シンデレラも王子に一目惚れした。二人は時間を忘れて踊り明かす(I)
魔法は24時に解けてしまう。彼女は急いで舞踏会から消え去る。その時、ガラスの靴を片方落としてしまう。部屋に戻ると魔法はすべてとけてしまったが、右のガラスの靴だけが消えずに残っていた(J)
王子がガラスの靴の合う少女と結婚するとのお触れを出す。それはシンデレラのことだ(K)
意地悪な継母がシンデレラを倉庫に閉じ込めて、ガラスの靴を履くチャンスを奪おうとする(M)
再び、ネズミや犬たちが協力して、継母の元から鍵を奪い返し、シンデレラを開放する。義理の姉たちは当然ガラスの靴が入らない。(足の小ささは歩行の不自由さを意味し、それは死者の世界に片足を突っ込んでいるからです。中国の纏足の文化にも通じ、背景にはオイディプス王の神話群が関係しています)
シンデレラにガラスの靴を履かせよう歩み寄る大臣に、継母が足を引っ掛けて転ばせて、ガラスの靴を粉々に砕く(M')
しかしシンデレラはもう片方のガラスの靴を持っていた。そして当然足にはぴったりと合う。昨日の舞踏会の少女がシンデレラであることが証明された。(N)
シンデレラは妃となって王子と永遠に幸せに暮らしましたとさ(↓ 死後の世界=永遠の世界へ回帰する)
まあ見事に形式通りですね。ていうか世の中で大ヒットするための雛形と言っても過言ではない。特にジャンプ作品とか、大体これ当てはまりますよ。やってみるとおもろいかもね。
鬼滅なんかは主人公の名前が竈門(死者の世界との通路を意味する)であり、額に傷があり、妹は鬼になりきらずにその力を生かして戦っていく(鬼と人間、死と生を媒介する、シャーマン)。もともと禰󠄀豆子が主人公の予定だったそうですが。見事に神話形式との親和性高いです。
「シンデレラ」がこの形式通りであるからには、「シンデレラストーリー」を商品として扱う芸能界は、当然この魔法神話のオンパレードです。乃木坂46とかNiZiUとか、シンデレラになれる少女を選抜していくストーリーを大々的に放送する傾向は加速してますよね。
乃木坂好きでした。乃木どこ最初から見てました。深川麻衣と橋本奈々未が好きでした。3期生が来たあたりで完全に興味を失った。
橘宅。デレデレして壊れたにぃにを見て、美也が母を呼びに行く。

が、母は出てきません。
橘は押し入れプラネタリウムから現世に出てきただけでもともとは神の世界の人です。母は存在しないか、あえていうなら宇宙であり、大地です。
こわ。
浴槽、ベッド、登校中、授業中、廊下(梨穂子のダイエット成功話も耳に入らず)、膝裏へのキスが頭から離れない純一。いたるところで先輩に再びのキスをせがむ。


橘に神経症状が出始めました。
眉毛のキス、膝裏のキス。森島編において、2回目に起こることは大概がうまくいきます。第四話のレビューで詳しくまとめますが、例えば現時点で、1回目の告白はダメだったけど、2回目の告白などはうまくいきました。でも2度目のエッチな要求はどれもことごとく断られています。
2回目繰り返せばなんでもうまくいくってわけじゃないことをちゃんと線引きしてくれてます。
このラインが有耶無耶になると、告白も2回目だから心動いたんでしょ、はいはい諦めなければ夢はいつか叶いますもんね、お疲れ様でした的な安易さを孕んでしまうので、その堕落に陥らないよう線引きをしっかりしていて、物語の秩序がちゃんとしてるなあと思います。
森島宅。ひびきと電話。ひびきはひびき宅玄関から。(寒そう)
わんちゃんの話ではないと見破られ、受話器を持ち替える。年下に甘えてもいいかな?と訊くはるかに、思いっきりいきなさい、とアドバイスする響。はるかが響の保護から卒業していく。






はるかの保護者が響から橘に切り替わる場面です。
水の守護者=永遠の守護者であるひびき。刹那の輝きであるはるかには絶対必要なパートナーです。ひびきのように永遠を司る者となり、永遠という途方もない高次元概念に押しつぶされないだけの強度をもつためには、イニシエーションをクリアする必要がある。
そのイニシエーションこそが、ポンプ小屋への冒険だった。
学校の外つまり死者の世界に侵入し、犬からの啓示をえて、ポンプ小屋で先輩の膝裏にキスした。この時、井戸を通して死者の世界とのネットワークを獲得した。橘は生と死という本来相反する二つの概念を媒介できる強度を手に入れた。だからはるかという極度の刹那性を持つ「花」の隣にいてもエネルギーを吸い取られることもなくなった(第二話の橘のふたつの死顔になる必要はもうない)。
このイニシエーションによって橘が強くなる理由は、ドラクエ6とかやったことある人ならわかりやすい。ドラクエ6では、現実の世界と夢の世界(=死の世界)を、井戸や穴を介して行き来して、各キャラが、散らばった自分達のアイデンティティを媒介することで、本来の力を取り戻していったな。それや。
ハッサンの正拳突きが強すぎてほんまに草でした。
主人公のライデインはあんま活躍せんかったな。あと同様の例は、イナズマイレブン2の吹雪士郎とかね。死んだ弟・アツヤの人格を分裂的に自己の中に併存させている段階では心身にえげつない負担がかかっていたが、弟の死という心の傷と向き合うイニシエーションを経て、自分の魂を媒介にしてアツヤと一体化し、ウルフレジェンドを覚える。生と死を媒介する強度を得て、最強フォワードが誕生した。
シーン19
風力発電機、学校の外観、絢辻さんと職員室、教室(薫と恵子)、図書館(梨穂子)、中庭で縄跳びする美也と中多、ガンダムの足と交尾する男子生徒、それを渡り廊下から見ている橘。を陰から見ているはるか。

シーン20
純一のうしろから抱きつき、「ごろにゃーん」攻撃。(あれはなんだ!と遠くから指差す生徒)
嬉しがる純一と、すっきりするはるか。

シーン21
二人で昼食。単なるラーメンを刺激的にするには?


シーン22
誘拐された設定で状況を刺激的に。演技スタート。




シーン23
はるか宅。楽しかった昼休みを思い出してきゅんきゅんするはるか。ねえちゃんうるさい、とサトシ。

コンサルみたいな言い回しでラーメンを刺激的に食べる方法を説明する純一。
しかしはるかはめちゃくちゃノリノリです。純一ですら引いてしまうくらいに。
このイベントは共感性羞恥をめちゃくちゃくすぐりますね。正直このシーンに耐えられるかどうかが、森島を好きになれるかの分水嶺かもしれんね。
ちなみに私は初めて見た時中学生で、いやいや流石に恥ずかしすぎるだろそれは!w人いるぞ周りにwとか一人で言いながらもめっちゃテンション上がってました。性癖を開拓されたと言っても過言ではない。
世も末やね。
第三話は終わりです。タイトルのヤキモチはすぐ回収されて、イニシエーションのための冒険がメインでした。
次回森島ラストです。
第四話へ
アマガミ第四話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/19/030234
参考
https://clavis.info/wiki/amagami_ss_02
アマガミ第一話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/09/005214
やな國こと柳田國男です。こちらはおりしーこと折口信夫君です。
折口です。
押し入れから出る純一。昨夜先輩にフラれた心労で寝られなかった。登校。
シーン2
目には大きなクマ。薫と梅原に心配される中、絢辻さんの提案から、保健室で休むことに。
シーン3
保健室。ベッドに森島先輩。足からのカット。先輩を見て瞬時にクマが治る。



絢辻さんが橘の恋愛進展に決定的な役割を果たしています。絢辻さんは等価交換至上主義でサバイバルしながらも、心の片隅に「サンタ(純粋贈与者)≒神になりたい」という相反する動機を持つ人間である事を覚えておいてください。作中でちょいちょい挟まれる絢辻のエスパー的な察知能力は、サンタ≒神としての素質の片鱗を伏線として見せている形になります。そして実際に絢辻はサンタになることができたのか?それは絢辻編を是非ご覧ください。






OPの最初のヒロインたちのカットについて、黒板が北としたときの各ヒロインの位置については前回軽く触れました。西と西南の空白には隠れヒロインと美也が入る。
基本的にclavis氏ブログをご覧ください。ただ西に美也で南西に隠れヒロインだと私は考えます(clavis氏と逆)。ここではその理由を含めて補足しておきます。
まず、八卦は、三つの爻(こう)から成ります。(三爻)
爻とは、卦をなす記号で、⚊陽(剛)と⚋陰(柔)の2種類があり、三爻だと組み合わせが2^3=8通りある。だから八卦いうわけですね。
これは端的に二項操作を表している。二項操作は、現生人類の脳に飛躍的進化が起きたあと、一貫して行われてきた人類の世界の記述方式です。人類は、太古においては神話の中で、現代においてはコンピューターにおいて、形は違えど一貫して二項操作を思考の基本原理としてきました。
コンピューターが0と1の基本単位で全てを構築しているのはわかりやすいと思います。では神話はいかに二項論理を用いるのか。二項操作をする神話的思考の例として、ヌートカ族の「波の起源」に関する神話がわかりやすいと思います。
「南風がのべつまくなしに吹いて海岸で貝を拾えなかった。風を殺すためいろんな生物が送られたが失敗した。唯一成功できたのはオヒョウとガンギエイだった。オヒョウですべった風がガンギエイに刺さって大怪我したためである。しかし西風だけは抵抗せず、今後も穏やかな風を吹かせることを約束した。日に二度の潮の満ち引きが起こるようになり、引き潮の間人間は貝を拾えるようになった。こうして人類の生存が救われた。」


他にも波や風とガンギエイの関わる神話は多く存在しますが、ここでガンギエイが選ばれたのは偶然ではありません。ガンギエイのもつ表(背=ザラザラ)と裏(腹=ぬるぬる)の二極性にあります。サイバネティクスの言葉を使えば、イエスかノーか一つの答えのみ与える動物なのです。肯定と否定という不連続の2つの状態を併せ持つ動物ゆえに、時に激しく時に優しい風という自然現象を説明するために絶好の素材だったのです。
風が強いときを+、弱い時を−とすれば時々吹く風を+−+−+−とか++−+−−のように表せる。
八卦も同様いうわけやね。あらゆる自然現象を説明するための最小ユニットとして、⚊陽(剛)と⚋陰(柔)という二項を出発点とすることで、いわば「八卦コンピューター」を構築している、と。
そこでアマガミ世界のキャラクターと合わせてまとめておきました。
参考
第一爻(一番下)足元、行動
第二爻(真ん中)精神、決意
第三爻(一番上)頭、頭脳
陽⚊ 強さ、プラス、肯定、豊か
陰⚋ 弱さ(柔らかさ)、マイナス、否定、乏しい
|
卦名 |
二進法 |
十進法 |
方角(後天八卦方位) |
キャラ |
性質 |
|
|
☰ |
乾 |
111 |
7 |
北西 |
森島はるか |
高貴、威厳、注目の的。天 |
|
☱ |
兌 |
110 |
6 |
西 |
(美也) |
少女。口。強いものに支えられる。第三爻だけ陰、あとちょっと、未熟、愛嬌 |
|
☲ |
離 |
101 |
5 |
南 |
火、情熱、芸術、熱しやすく冷めやすい、外は強いけど中は弱い、離、出会いと別れ |
|
|
☳ |
震 |
100 |
4 |
東 |
第一爻だけが陽、行動主体、動いてから考える |
|
|
☴ |
巽 |
011 |
3 |
南東 |
不安定、風、隠れる、謙る、入り込む、異なるものをまとめる |
|
|
☵ |
坎 |
010 |
2 |
北 |
本体(真ん中)は陽だが外は陰。苦労が多い。表面上人当たりは良い。冷たい、危険、悩み |
|
|
☶ |
艮 |
001 |
1 |
北東 |
安定、山、慎重 |
|
|
☷ |
坤 |
000 |
0 |
南西 |
(上崎裡沙) |
弱い、小さい、低い、女性的、ゆっくり、地 |
美也の未熟な身体性、ちょっと足りてないゆえの愛嬌、口達者なところ、純一という存在と支え合う性質を考えると、美也が兌(西)ではないか。坤(南西)の隠れヒロインは、アマガミ世界を裏側から割く(かみさき)存在であり、いつも裏側から世界をのぞいている。弱く、低く、遅い、それでいながら実はアマガミ世界を創り出した母なる女性でもある。そういった性質から、全て陰をまとう坤がふさわしいと私は考えます。
裡沙ちゃんはギラティナやね。
保健室にて。橘は、はるかに告白し振られたことを回想。先輩が橘の存在に気づいて起きる。
昨日振られた直後で普通に話していいのか戸惑う純一に、男女関係は恋人だけではないと諭すはるか。
実は君のこと結構気に入ってるんだけど、迷惑?と尋ねるはるか。答えに困る純一。
すかさずはるかが謝る。「私は良くても君は嫌だったよね。ひびきにも言われるんだ、もっと人の気持ちを思いやれって。」
シーン5
今まで通りの関係でいようと約束し、握手をかわす二人。好きなタイプを改めて聞くも、言ったそばから全部違う気がしてきた、とちゃぶ台を返すはるか。
はるかと別れて教室に戻ると、目のクマは取れ、すっかり元気が戻っていた。



この前日森島が夜更かしをして何の番組を見ていたかは、clavis氏が結論を出しています。
1999年11月19日金曜日、橘くんからの告白を断ったはるかちゃんは、タモリ倶楽部、さんまのまんま、パペポTVを見て夜更しして、次の日保健室で寝ているところを橘くんに見つかった、ということでした。
アマガミ世界が1999年という説については、最初に提唱された方のブログ記事を貼っておきます(http://abiesfirma.sakura.ne.jp/bubu-n/log/eid546.html)。
上記記事の掲載は2009年3月31日。アマガミがPS2で発売されたのが3月19日なので、2週間足らずでここまで作品世界を見通していることになります。脱帽です。
利休帽かぶってますけどね。
ついでにアマガミの考察において最も深く鋭い視点を提供してくださっているブログもリンクを貼らしてもらいます。
(http://bbama33378.blog.fc2.com/blog-category-2.html)
こちらのブログを読めばアマガミのキャラクターたちの行動原理を深く理解できます。ブログ内で言及されている他の考察記事のうち削除されてしまったものもあるので、もし魚拓などを探して見つかれば改めてリンクを貼りたいと思います。
執念がすごいな。
本題に戻ります。
振られた翌日なのに普通に話していいのかキョどる橘をよそに、変わらず普通に話しかけてくれる先輩。橘の体を心配すらしてくれる。
ついでに生足にソックスを穿くサービスカットを見せる。
橘はちゃんと自分の混乱を言葉にする。あえて言わずに、まあとりあえず話せてるから有耶無耶でもいいかって満足することもできた。でも言った。偉い。それに対しはるかは、彼氏彼女関係だけじゃないんだし、別に普通に話そうよ、実は君のこと気に入ってるんだけど?、と切り返す。しかし、すぐさま自分の軽率さを謝ります。
謝罪の言葉は、「私は良くても君はいやだよね。」ではなく、「いやだったよね。」です。自分の中で完結させた判断ではなく、別の参照先を仄かしています。
その抑圧の原因はひびきです。保護者として、はるかが全開にならないよう言い聞かせている。
はるかの影の部分、そして行動動機がはっきり見えたシーンです。はるかの天真爛漫さが、時に人を傷つけたり、はるか自身を傷つけたりする。だからひびきが保護者として守っている。第一話で、橘の告白を吟味するときの冷たく鋭い目つきは、橘の真意を探るものであると同時に、はるか自身が傷つかないための予防線を引くための目つきでもあった。はるかが無敵の恋愛女王ではないことが明らかになってきました。
半信半疑=傷つかないための予防線を今微妙なニュアンスではるかは示そうとしています。
丘の上公園にて、先輩と今まで通りに話せること、もっと仲良くなれるかもしれない、とやる気が出て走り出す。
シーン7
森島宅。犬の本を見て、純一に似てるかも、あの時の告白はちょっとだけかっこよかった、と思い出す。


橘が公園で元気のあまり爆走し出したときに、それをみた子供たちが「なにあれ?」「加速装置?」って言ってるんですがツッコミが古過ぎます。
サイボーグ009らしいですね。固有名詞のツッコみなのに固有名詞だと判別しづらいのが致命的に弱い原因だと思います。代わりになんとツッこんでいればよかったでしょうか。
何から逃げてはるんですか。
今まで通りでいい、いやもっと仲良くなれるかもしれない。このしつこいポジティブ思考がどんどんプラスに作用していく。
ポジティブさは物語が動く一つの条件にすぎません。二人の恋愛は、時間的、空間的条件をクリアしている。はるかが今後橘と繰り広げていくような身も心も躍るような恋愛をするチャンスは、これら全ての条件が揃っている高3がラストではないかというのが自説です。ひびきがいて、不完全な神である橘がいる。この環境がいかに貴重か。神話は、限られた時間、空間においてのみ、厳かに語られるものなのです。
彼女は、馬跳び、プロレス、自分のやりたいことにどんどん人を巻き込む結果、人と距離をいたずらに縮め、不用意にもてすぎる。特に異性関係、恋愛がらみになると、どうしても、相手や自分が傷つくことがある。その神的な力が暴走しないよう、ひびきの保護下でちゃんとコントロールする。その教えにしたがって、今のところは、良い人が現れても、早い段階で告白させるなりして、ややこしくなる前に慎重に関係を精査し、選別する。そんな遠回りをしないといけないほど、恋愛に関しては、実は経験が浅い。
橘は、しつこくポジティブにアタックすることで、一見無敵の彼女が実は隠し持っていた恋愛に対する禁忌をほどいていくことに成功していく。それは彼女自身もまだ、禁忌を自覚しながら、正しく恋愛がしたいと望んでいたから。タイムリミットにまだ間に合っているわけですね。
完全に思われたはるかも、実はひびきのおかげで禁忌を自覚し、バランスを保てている、不完全な神だった。純一もまた、クリスマスのトラウマを負った不完全な神だった。そんな不完全な神二人が、美也とひびきというそれぞれの守護者の庇護下から卒業して、自らの力と化学反応で神性を回復していく。それが森島編の神秘性であり、だからもっとも美しくある。
しかし、間に合わなければ、全てがお膳立てされていた神話の時間は終わり、みずみずしい力は汚れていく、と。
闇堕ち(https://dic.pixiv.net/a/%E6%82%AA%E5%A0%95%E3%81%A1%E4%B8%80%E8%A6%A7)
人を動かす力に長けた先輩が、大学に入ったらどうなるやろね。ひびきという監督者のいない、誰も守ってくれない環境で欲望が解き放たれていったら。距離を間違えるから禁忌としていた恋愛について、非常に無防備にならざるを得ない。そこでうまく良い相手が見つかればいいけど、うまくいかず誰かを傷つけたり自分が傷つけられていったとしたら、禁忌を忘れて人を思い通りに動かしていくとしたら。
見栄と金の淫らさが前傾化してくる大学生活、酒なんかも飲んじゃって、彼女が橘と育むような奇跡的な恋愛は、もう難しいかもしれんな。
橘がトラウマを負った不完全な神であるのと同様、森島も恋愛への禁忌を負った不完全な神だった。正しい時間と空間において、正式な手順で神としての力を取り戻せればハッピーエンドが、誤った手順で力を暴走させてしまうとBADエンドが待っている。かつて橘の告白を断った時の冷たく鋭い目つきの方に、飲み込まれていく可能性を孕んでいるのではないでしょうか。
あの人を精査する冷たい目つきが森島の奥に潜む魔物な訳ですね。

そしてその極致が、森島スキBADです。
※ネタバレ注意

スキBADまで冷酷さを磨くのは稀なケースかもしれないですが、彼女の一つの潜在的な性質であることは肯定せざるをえないと思います。
ここで一旦スキBADについて軽く見ていこうと思います。
まず、スキBADとは、純一が二股をかけクリスマスデートの約束もダブルブッキングし、イブに片方とデートするも、やっぱこいつちげえやって思って、翌日のクリスマスに、前日デートしなかった方の子に、改めてやっぱお前が好きやわ、と告白することで、告白したヒロインとの間で到達するエンディングです。イブのデートをすっぽかしたのに告白して、許されるのか、許されないのかがポイントとなります。ちなみにスキGOODは二股はかけつつも、デートも告白も同じヒロインにすることで到達します。
ここで発揮されるのは、紛れもなく、心優しい変態紳士の振る舞いとは全く真逆の、アマガミ世界の創造神にして唯一神としての、圧倒的な権力の濫用やね。
スキBADやスキGODDの橘は、対称性の原理を完全に外れた暴力的な行動を取ります。橘はクリスマスや恋愛にトラウマを抱えてるはずなのにも関わらず、二人のヒロインと堂々関係を築き、どちらにしようかな、と唯一神の立場から取捨選択する。橘純一という一人の人間の物語のレベルで考えたら、絶対に破綻しています。そんなふうに女をモノのように扱えるなら、初めからクリスマスにすっぽかされた時にトラウマを負う必要がない。繊細さ、ナイーブさを持つはずがない。しかも、二股ルートでは、少なくとも誰か一人には、自分がかつてされて嫌だった「クリスマスのすっぽかし」を食らわせるわけです。明らかに行動に一貫性がない。
トラウマではなく、復讐心なら、自分がされたことを女どもに味あわせてやる、と一貫性だけでいえばあります。でもそういう悪意の描写は全くない。ただひたすら温厚だったはず。
完全に一人の人間のキャラを破壊して暴走しています。まてよ、大人しく振る舞っていたけど、実は俺、この世界の唯一神だったんだ。じゃあ、自由に女の子に手出しまくっていいよね?と。それはプレイヤー側にもたらされる誘惑でもあり、れっきとした公式に用意されたシナリオでもあるのですが。このスキBADとGOODの話は七咲のところで詳しくやりたいと思います。
ゲーム内でも当然それなりのしっぺ返しは当然待ってますよ。聖母かよってヒロインもいますが。良い子は真似しないでください。
体育館にて、はるかが一旦は提示した好きなタイプ「タフ、カリスマ、リーダーシップ」を習得するため、梅原とプロレスの特訓をする。(美也と紗江が通りかかるも素通りする)
シーン9
上ジャージ・下ブルマの暑いのか寒いのかちぐはぐなはるかがノリノリで登場し、プロレスに参加申し込み。はるかに卍固めをかけてもらうお願いするも、ひびきが現れて有耶無耶になる。名残惜しそうな森島に、初めて橘から「おあずけ」をする。流れで4人で一緒に下校することに。



シーン10
下校。(上から、坂の下を歩く森島先輩を見下ろす。)
いろんな生徒に挨拶されるはるか。次第に、話題は、はるかのもてっぷりに関する内容に。
2,3年で一番モテる男に同時に呼び出されたエピソード。梅原が、そんなにモテるなら2回告白してきたやつはいないのかと質問し、核心に迫る。
いないけど、いても多分断るだろう、とはるかが答え、密かにもう一度チャンスがあると思っていた橘は、再び心を折られるのだった。



重要部だけかいつまんでいきますね。まず、プロレスについて。これがまさしく、私が、森島と橘の恋愛に唯一無二の輝きを見る理由の一つなんです。
鼻息荒いですよ。
橘は、かつてすっぽかしをくらった恋愛へのトラウマを克服するという一大決意をしながら、先輩の誘導にのってさっそく告白し、そして振られるという経験をしました。ですが、関係は悪化せず、そのままの関係を続けようと握手を交わし、むしろもっと仲良くなれるかもしれないと思考を展開します。ちなみにゲームではポジティブさを捨てた瞬間ゲームオーバーになる爆弾イベントが数多く仕掛けられている。ポジティブさこそが、かつて神だった純一が、神性を取り戻して、もう一人の神であるはるかにたどり着くために必要な鍵な訳です。
確かに、しぶといっちゅうのは大事だよな。一回きりの告白で諦めるようなヤワなやつらから、橘は、すでに一線を画している。自分の殻を破ろうとして、確かに失敗したかもしれないけど、そのおかげで身軽になり、推進力になっていく。
失敗というのは、捉え方を変えれば、それ以上失うものがなくなっていくということですからね。無敵なんです。そして、プロレス。タフ、カリスマ、リーダーシップという、はるかが提示した「理想の男像」に対し、真摯に向き合っている。しかも、言われたことはちゃんと受け入れつつも、奇想天外な行動へと昇華している。それも、梅原を巻き込んで。これはまさしく、彼がトラウマと向き合えている証拠でもあるし、彼の変態紳士神としての魅力そのものなんじゃないかと思うわけです。
美也がプロレス(をやっている純一)に興味を示す中多を体育館から引き離すカットも、橘の変態紳士神としてのパワーの復活を見い出すとともに、紗江がそれを見てうっかり純一に惚れてしまわないよう陰ながらサポートしたシーンかもしれんね。そして確かに、橘の変態紳士としての持ち味が一番出るのって、森島といる時と言ってもよさそうですね。
他のヒロインへの変態紳士性はそこまで突飛なものは少ないです。薫のヘソキスくらいでしょうか。紗江との教官プレイなどは想像力の豊かさを欠いたただの平凡な変態です。橘と森島こそが、もっとも予想もつかないミラクルな化学反応を連発して起こしていると思います。
それを描いても壊れないだけの強度を持つ可能性を二人は秘めている。トラウマを克服する最初の恋愛と、ひびきの庇護下から抜け出す最初の恋愛という、奇跡が重なるから。
さらに、プロレスが有耶無耶になり名残惜しそうなはるかに「また今度やりましょう」と余裕をもっておあずけができるようになった。少し前までは、先輩の荷物持ちができるというだけで梅原の約束はどうでもいいと思っていたような男が、です。ここで初めて、橘とはるかの主導権が逆転の兆しを見せています。なぜか。私はこう考えます。はるかは、ある意味ひびきの庇護下にあることをいいことに、やりたいように自由に振る舞っているだけ。同じステージにとどまっていると言える。それに対して、橘は、自分のトラウマと立ち向かうことで、告白に踏み切った。たしかに告白自体は失敗したかもしれないが、先輩ともっと仲良くなるにはどうすればいいか、次の手段を考え、実際にプロレスという行動に移している。彼は、着実にステージをのぼっている。あるいはトラウマを克服することで本来持っていた魅力を取り戻している。
一旦断られていることで、森島先輩にふさわしくないNG行動というのも身を持って知った。先輩の言った「好きなタイプ」は、どれも口からでまかせかもしれないけど、でもそういう魅力的な人間であることはどのみち先輩と釣り合うためには必要なわけやし。実際、その特訓の成果が間接的に現れ、一緒に帰るという承認を頂いたわけやしね。
トラウマと向き合い、行動に移す。並大抵の決意ではできないことです。相当な覚悟がいるでしょう。これが真正面から描かれるのは、ゲームにおいてははるかと紗江のみです。そしてアニメの紗江パートは深みが欠落し上記のテーマも消失するので、アニメにおいては、唯一、森島編でのみ、彼は自身のトラウマと直に向き合って、そして結果へと結実させていく。アニメで、アマガミ世界と唯一ディープに関係しているのは森島編でしょうね。
さらに帰り道、はるかが高2高3の一番モテる男から告白されたことについての反応もすばらしい。まず、「一番モテる男」という情報に特に反応を示さない。弱腰にならない。そして、それらの告白を振ったという事実に対しては、安堵する。自分が土俵に立っている、自分こそが森島先輩の隣に立つ、という自覚がなければ、こういう反応にはならないでしょう。
確かに。しかしながら、梅原の核心に迫る質問によって、はるかはもし同じ人に2回告白されても断るだろうと、先回りして橘の目論見を打ち砕いてしまいました。
意気消沈する純一。ここで諦めることももちろん可能です。ゲームでも、諦める分岐点が無数にあります。でも、彼はもう失うものもない。この後彼はどう行動していくのか。
続きを見ていきましょう。
帰り道で先輩が2回告白されてもまた振るだろうと言った翌日の朝。瞳のハイライトすら消失し、さらに意気消沈する橘。美也は自分がにぃにの肉まん食べたせいかと話しかけるも全く耳に入らず。

シーン12
先輩に挨拶された途端、純一は元気になる。美也はふてくされて逃亡。


シーン13
水道にて。デレデレしてるバカにぃにに美也が冷や水を浴びせる。
シーン14
教室にて、水も滴るいい男と、薫と梅原にからかわれる。

シーン15
外から教室の窓、先生の授業風景、熱心な絢辻、寝る梅原、窓の外をぼんやり眺める純一。そこに紙屑を投げる薫。迷惑そうな顔する恵子。紙屑の投げ合いはヒートアップ。最後は先生に怒られる。


先輩といると、気づかずニヤニヤしてしまう純一。恋やね。
恋ですね。
純一が薫の代わりに掃除当番。ゴミ捨ての最中に、はるかに発見される。水着もってない?持ってるわけないじゃないですか。
水泳部の、部活用でないスクール水着なら借りれるだろうとの名案を思いつき、プールへ。はるかが橘を引っ張っていく。

シーン17
プールで、水泳部員から水着を借りることに成功。
シーン18
はるかの着替えをまつ純一。次第に集まり始める水泳部員。七咲がなぜプールにいるのかと純一を問い詰める。しどろもどろの純一。そこにはるか登場。見惚れる純一。泳ごうとするも、響が二人を注意し、プール外へ追い出す。

シーン19
泳ぎたかったと残念そうな先輩の前で、響の部長の立場の肩をもつと、ひびきの味方するつもり?とむくれるはるか。純一は代わりに図書館で犬の本を探しましょう、と提案し、はるかはそれを承諾して図書館へ向かう。

ボンキュッボン、BKB、ヒィ〜ア!!
バイク川崎バイクですね。
なんのために橘をプールに連れてきたのか。しかもゴミ箱ひっさげて。
彼女は、一人では泳げないという共通点は見出せますね。第4話で橘とプールへ一緒に行く時もそうです。水を見るのは好きだけど、一人で水の中に入ることはできない。花としての有限な性質をもつ彼女は、水という永遠の中に一人で入ると、完全に飲み込まれて、帰って来れなくなる危険性がある。だからこそ水という禁忌への興味が人一倍ある。
水の守護者であるひびきとの相性の良さもうなずけます。サクヤヒメとイワナガヒメ、有限と無限、一瞬と永遠。
ゴミ箱は、橘のトラウマや傷を、放棄するための受け皿です。だからこんなに意味ありげに持ち歩いている。
問い詰められた時に掃除途中でしたって言い訳するための道具ちゃうの?
図書館へ。ゴミ箱はまだある。犬の本を探してくるため席を立つと、梨穂子と遭遇。ダイエット本を探しているとあて、そんな気にする必要もないと思うけど、とフォロー。


また梨穂子が橘の童貞臭ファブリーズしてくれてます。
どうせダイエットの本だろ。そんなに気にしなくても良いと思うぞ。ここで橘の神通力の高まりやかっこよさを示すことによって、ここから先の橘の勇気ある行動が、スムーズに見れるようになれますね。
シーン21
館内のカット。席に戻ると、眠っている先輩。橘は上着をかけ、見守る。


シーン22
外はすっかり暗くなった。目を覚ます。上着をかけてくれたこと、本を見つけてくれたことに喜ぶ。
シーン23
本に夢中の先輩を呼んで不意打ちをかけ、2回目の告白。戸惑うはるか。二人の影とセリフの掛け合い。動く影。二人のカットに戻る。二人の手の動き。
「あ……」
「おはようございます、先輩」
「あ……、ごめんね、寝ちゃった」
「少しだけです」
「あっ、かけてくれたんだ。ありがとう、優しいね」
「いえ、そんな……」
「……」
「ゲフン!ああ、すみません、それだけしか、見つけられませんでした」
「ううん、ありがとう。……ああ!これまだ見てない。これも、これも!やるわね!」
「それほどでも……」
「わー、これかわいい!この写真もキュート!フフフ……」
「……先輩」

「うん?」

「好きです」

ワァオ!
「えっ…?」
「僕、森島先輩が好きです」
「んもう……、またなの?」
「すみません。迷惑なら、もう二度とこんな事言いません」
「迷惑じゃないけど…、なんで?」
「先輩と一緒にいると楽しくて、もっと色々な話をしたいというか、それで……」
「急にそんな事言って……」
「すみません」
「謝らないで」
「すみま、あ……」
「なんで?だって、こないだ……」
「あきらめたくなくて。先輩が迷惑じゃなくて、またチャンスがもらえるなら、あきらめたくない。何度振られても構わない!僕が一番怖いのは、返事さえもらえない事なので」
「そ、そんな事しないわ」
「ありがとうございます」
「な、何お礼言ってるの。……変なの」
「あの、僕、先輩のこと好きでいていいですか? うっとうしかったら諦めます」


「う、うっとうしくなんか、ない……」
「じゃ……いいんですか?」

「……うん」

「やったあ!ありがとうございます!」
「もう、もうー」
「えっ?」
「もう、なんでそんなに一生懸命かな。そんなに頑張られたら、ほっとけないじゃない」
「先輩?」

「……これでもくらえ!」






ご覧いただきましたでしょうか。
男に生まれてよかったなと、思いました。
まだまだイニシエーションは待っていますが、とりあえず好き同士であることはほぼ確定しました。森島先輩が実は人を弄ぶ悪女なんじゃないか?という疑惑も晴れて、可愛さが急激に前景化してくるシーンでもあります。
順に見ていきましょう。プールで泳げなかった不満や、響の肩を持つ純一への不満を明らかにするはるかに動じず。図書館まで連れてくることができた。ちゃんということを聞いてもらえるようになりました。
橘が自分から先輩のために直接何かをしてあげるのも初めてです。
先輩に上着もかけてあげてね。
起きてそれに気づき、優しいのね、と言われますが、もううろたえません。むしろそんな言葉はもう欲しいと思っていませんよ、というテンポ感すら感じます。
そして告白。前回の告白とは全く雰囲気が違います。2話目にして2回目の、本当の告白をしています。前回の告白は、はるかの不意打ちに誘導されるがまま、戸惑い、うつむき、目をまともに合わせられず、なし崩し的で受動的な決意でしかありませんでした。それに対して今回の告白では、はるかをまっすぐ見つめ、能動的で主体的な決意のカットがある。橘がはるかの不意をついている。
先輩が寝ている間、橘には先輩との関係について考える時間がありました。何を考えていたのか。自分のトラウマを払拭するために、森島先輩という憧れのアイコンを、利用しようとしていた自分。はるかを使って恋愛そのものを取り戻そうとしていた自分。そんな自分本位な考えは見破られ、告白はもちろん失敗した。そんなんじゃ、森島先輩にアタックする有象無象の男たちと同じことだ。それではダメで、じゃあ先輩に見合う男になるにはどうすればいいのか。タフ、カリスマ、リーダーシップ。それを備えるためのプロレスの特訓もした。一緒に先輩と帰れた。でも、2回告白する人がいても、また断るだろうと、先回りされてしまった。お先真っ暗。そんなときに美也に冷水を浴びせられ、先輩といるとニヤニヤしている自分に気づく。そうか、自分は、純粋に、先輩のことが好きなんだ。一緒にいると楽しいんだ。だったら、恋愛を取り戻すなんてことは二の次だ。2回目の告白が断られたって、別に構わない。だって先輩のことが好きなんだから。
恋愛を捨てることで逆説的に恋愛を取り戻す。トラウマに固執するのをやめることでそれが突破口になる。
もちろん、急にトラウマから解放されるわけではありません。だから、「僕が怖いのは返事さえもらえないことなので」「好きでいていいですか?うっとうしかったら諦めます」という遠回りさはつきまといます。でもそれは等身大だから、非常にいい。自然体です。だって一回振られてるのに、今更、カッコつけたって仕方ないのだから。
そしてその優しさ、自然さが、森島には直撃します。なぜか。
言ってみれば彼女もひびきの庇護下でないと暴走してしまう弱さがある。だからふだんは抑圧している。恋愛も然り。
なぜ彼女が恋愛を忌避しているかは、clavis氏のブログから軽く引用してまとめておきます。
| 恋愛はしたい | 恋愛は無関心 | 恋愛はしたくない | |
|---|---|---|---|
| 計算(脈あり) | AAA | BAA | CAA |
| 計算(脈なし) | AAB | BAB | CAB |
| 天然(脈あり) | ABA | BBA | CBA |
| 天然(脈なし) | ABB | BBB | CBB |
| AAA | 恋愛はしたいし、橘くんいいなと思ってるし、だから気持ちも振り向かせておきたい。 |
|---|---|
| AAB | 橘くんは別にタイプじゃないけど、恋愛はしたいし、気持ちはこっちに向かせておきたい。 |
| ABA | 恋愛はしたいし、橘くんいいなと思ってる。 |
| ABB | 恋愛はしたいけど、橘くんは別にタイプじゃない。 |
| BAA | 恋愛は興味ないけど、橘くんいいなと思ってるし、だから気持ちも振り向かせておきたい。 |
| BAB | 恋愛は興味ないし、橘くんは別にタイプじゃないけど、気持ちはこっちに向かせておきたい。 |
| BBA | 恋愛は興味ないけど、橘くんいいなと思ってる。 |
| BBB | 恋愛は興味ないし、橘くんは別にタイプじゃない。 |
| CAA | 恋愛はしたくないけど、橘くんいいなと思ってるし、だから気持ちも振り向かせておきたい。 |
| CAB | 恋愛はしたくないし、橘くんは別にタイプじゃないけど、気持ちはこっちに向かせておきたい。 |
| CBA | 恋愛はしたくないけど、橘くんいいなと思ってる。 |
| CBB | 恋愛はしたくないし、橘くんは別にタイプじゃない。 |
AAA,ABA→1回目の告白で冷たい表情になる必要もなく喜ぶはず。仮に一旦泳がせたとしても、2回目の告白を受けてうろたえる必要がない。
BAB,CAB→森島悪女説。橘を好きじゃないのにキープする価値があるのか。それに、キープ目的なら1回目の告白で冷たい表情で吟味するカットは要るのか。
BBB,CBB→全部橘の勘違い説。だったら2回目の告白で眉毛にキスするわけない。
AAB,ABB→別にタイプじゃないけど、まあ付き合ってみるか。高校生的ではあるが、だったらなぜ橘なのか。受験を控えた今。
CAA,BAA→恋愛嫌or興味ないけど、橘くんは好き。矛盾と葛藤を抱えるキャラ。にしては森島のそういった矛盾を表現する描写はないし、不用意に告白されること自体もっと嫌がって、多くの人から告白されるみたいな状況を意図的に防ぐはず。そうじゃないと疲れ果ててしまうだろう。
残るのは
| BBA | 恋愛は興味ないけど、橘くんいいなと思ってる。 |
|---|---|
| CBA | 恋愛はしたくないけど、橘くんいいなと思ってる。 |
恋愛に興味なかったら、「もしかして私のこと、好きなの?」「ざーんねん」とは言わないはず。特に考えなしにその場のノリで言ったにしても、告白されたあとの冷たい表情が説明つかない。もっと素直に、初めの段階から、好きだけど私誰とも恋愛はしないの。友達でいたい、と伝えれば良い。

結論CBA「恋愛はしたくない。(不用意に恋愛してはいけない。)だけど、橘くんのことは良いなとは思っている。」
馬跳びやプロレスをいまだにしたいはるか。その無防備さで、人との距離感を誤ってしまう。特に恋愛がらみでは、好意を抱かせてしまうから、先回りしてフっておく必要がある。それはひびきから与えられた教えでもある。
こうして、恋愛を抑圧し、忌避している。だが、橘のことは良いなと思っている。
森島は、恋愛のことについては、どうしたらいいかわからない。そこに、橘が現れた。初めの告白は、ちょっとだけカッコ良くはあったけど、ドキドキはしなかった。でも今回の告白は違った。彼女の恋愛への忌避に沿うようにして、彼は、「好きでいていいですか」と問う。もし、この段階で、付き合ってください、まで言われてしまうと、抑圧の方が働いてしまうかもしれない。少なくともはるかは混乱してしまうでしょう。混乱が生じるということは、エスコートできていないということ。告白自体が嬉しくはあっても、純粋な感動の中に、反発力が加わってしまう。
でも彼は「好きでいていいですか」という、彼女に混乱をもたらさない、正解の告白を導いた。なぜ導けたか。橘が既に一度告白し失敗しているから。そして帰り道で2回目の告白をされても断るだろうというはるかの発言に配慮したからです。直前の梨穂子のお清めも、功を奏したかもしれません。告白を受けたはるかの「なんで?だって、こないだ...」というのも、告白して振ったばかりなのに、というのと、2回目の告白も断るだろうと言ったのに、ということ、さらに、私は恋愛自体が禁忌だから忌避しているのに、どうして距離を縮めようとしてくれるの、という深度まで含まれていそうです。こうした森島の脆さ、発言の機微を、橘は、汲み取ることができた。自分のトラウマや、先輩との関係について、ちゃんと考え抜いた結果でもある。そしてそれらを極めて自然体やってのける純一。
だからはるかにここまでクリティカルヒットしたわけですね。
友達でいよう、というはるかの禁忌の提示を、蔑ろにすることなく、しかし、限りなく「セッキン」していく。
そんな橘の告白を受けて、森島は、自分も勇気を振り絞り、立ち上がって、純一の困り眉毛にキスします。この時、肩にかかっていた上着を脱ぎ捨てる。
それは、彼女のひびきからの庇護下の卒業。ひびきの庇護下でしか正しい距離感の人間関係を図れない過去からの卒業を意味します。上着を脱ぐことで、彼女は脆くなりつつも、身軽になりました。禁忌を捨て、保護から卒業する。
しかし、上着をかけてあげたのは他ならぬ橘でした。このささやかなズレは後々説明します。そして、確かに上着は脱いだけど、まだ服は着ている。まだ脱いでいないベールが、層が残っています。ここから後、森島先輩は、何を脱ぐのか。
それ以上は禁忌とさせてください。

なにこの恰好!絶対にブラをしていない!
回してるのがハートのエースっていうのが、2010年じゃないですね。
私はこの布になるよ!そしてどんどん伸びましょう!
一話から脚本が木村暢に変わっています。一つのパートの中で脚本が変わるのは森島編だけですね。
第三話に続く
アマガミ第三話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/19/022527
当該ブログトップ
https://somimy.hatenablog.com/entry/9999/12/31/000000
はじめに
これから書く一連のアマガミSS(とゲーム「アマガミ」)のレビューは、clavis氏のブログを勝手に継承したものです。折口信夫と柳田國男の対話形式を踏襲しております。基本的にアニメアマガミSS26話の流れにそのまま乗っかってシーンごとに検討し書いていきます。
1-4話、森島はるか編については、clavis氏のブログで既にレビューされています(5話以降はない)。このsomimyブログでも1-4話は再度レビューされますが、内容がかぶる部分は多少省略すると思いますので、基本的にはclavis氏のブログをまずご一読ください。https://clavis.info/wiki/amagami_ss_01
なるべく目新しく、面白く、そして意味のない考察ができればと思っております。目次も作っておきました。シーンとは別に見出しが作られている部分は、clavis氏の方では言及がない部分をピックアップしておりますので、既にclavis氏のブログを確認している場合はこちらの見出しを参考にしてくださると良いかもしれません。
柳田國男です。
折口信夫です。
父は神道学者をやっておりました。
二人でアマガミSS全話レビューをやっていきます。このくだり、デジャビュがすさまじいのですが。
アマガミレビューに民俗学を持ち込んだ先駆者であるclavis氏のレビューブログの伝説の書き出しですね。
リンクを貼っておきます。(https://clavis.info/wiki/amagami_ss_01)
いきなりメタ発言やめてください。
さて、clavis氏の焼き直しをしても仕方がないので、我々は、全話レビューという形式は継承しつつ、内容において差別化を図っていきたいと思っております。
と、言いますと。
基本はアニメ内容の進行に沿って考察を進めてはいきますが、存分にゲーム内容も絡めていきます。2度、全イベントコンプしてるので。
エンディングコンプじゃなくて、イベントコンプはなかなかのもんやね。しかも2度も。親父にもぶたれたことないのに。
涙イベント、二股ルートといったアマガミの闇の部分についても言及していきます。なにせ、それらも均等にヘキサマップのうちのひと部屋を与えられた、アマガミ世界を暴くための重要なイベントのひとつひとつですからね。
特に涙イベントは極限状態にある男女の駆け引きや、普段落ち着いた時には見れない究極の素顔が見れておもろいね。
先輩なんてメロンパンになってしまえばいいんです!、どうせ私は塩素臭い女です。など、名言も生まれています。悲劇と喜劇の表裏一体ですね。詳しいことはあとで見ていきたいと思います。
絢辻と薫の修羅場とか最高やったね。
ちょっと一旦黙ってください。
ほえ。
さて、アマガミSS1話から4話、森島はるか編については、clavis氏が十分すぎるくらいとりあげてくださっています。ですのでこの4話ぶんについては自分が補足できそうなことをあげるにとどめます。せっかく浮いた部分で、橘純一やアマガミ世界についての全体的な考察をちょっと盛り込んでおきます。
エコやね。
とはいえ全体の考察については別の章を作るかもしれません。
エコやないね。
最初は森島先輩ですね。
主人公橘純一にとって、唯一の先輩ヒロインやね。
アマガミには6人のヒロインがおり、先輩が一人、同輩が三人、後輩が二人とおります。
六観音やね。
さっき八乙女ゆうてたやないですか。
ゆうてないよ。
すみません、clavis氏のブログの記憶とごっちゃになってました。
類化性能やね。
とはいえ、これはどちらもまちがっておらず、表向きにはヒロインは6人ですが、隠しキャラと、妹を含めると8人になります。メインヒロイン6人に4話ずつ、隠しヒロインと美也に1話ずつ、アニメであるアマガミSS(1期)は計26話ですね。
四話のあいだに、互いに恋し、想いを募らせ、愛が成就するまでを描くと。


二年前のクリスマスイブ。やっとの思いで約束をこぎつけた橘純一は、待ち合わせ場所である丘の上公園に向かった。あたりにはカップルがちらほら。自分もその一員になれると胸を弾ませるも、待っても待っても、結局彼女はあらわれなかった。雪が降ってきた。
中三のクリスマスイブ、デートをすっぽかされます。何気ないツカミっぽいシーンですが、このエピソードはアマガミ全体を支配する通奏低音となっていきます。
アマガミ世界が誕生した日やね。
橘純一がアマガミ世界を創設した日とも言い換えられます。
ああ、だから創設祭なんや。
ええ、輝日東高校の創設者も広い意味では橘純一ですからね。そういう点で彼はアマガミ世界における唯一神的な存在といえます。
純一やもんね。純粋に一つ。多神というよりは唯一神っぽいね。クリスマスだしね。
アマガミは、神がクリスマスのトラウマという俗世的汚れをもって地上に降りてきた、貴種流離の話ともいえそうです。
天神やもんね。または、天が彌やったな。天神は唯一神たる橘純一で、彌は巫女、つまりヒロインたちやな。
ゲームにおいては顔が見えない存在であるのも神の要素を表しています。神は人々を見ることができるが、人々は神を直接見ることはできないという非対称性を孕んでいます。
まあアニメではおもっくそ顔出てるけどね。
ここで言いたかったことは、橘純一はアマガミ世界の創設者であること。世界の創設者ゆえに(天)神としての性質をもつこと。アマガミ世界が創設された日は、「2年前のクリスマスイブ」であったこと。天神に使える天が彌(ヒロインたち)が存在していること。橘純一は、天の神でありつつ、クリスマスのトラウマという俗世の因縁によって、現世に迷い込んできたこと。こんなもんですね。
「クリスマスのトラウマしか橘純一の内面を定義するものがない」とclavis氏も言っていましたし、その通りではあるのですが、たったそれだけの内面の定義が、これだけの意味を持つことができるのは、驚くべきことやね。
おそらく、アマガミ製作陣は多かれ少なかれ、こうした民俗学的、宗教学的背景に明るい方がおられたのではと思います。そういう意図がなく、甘噛みをたんにカタカナにしたアマガミ、というタイトルをつけた、とは考えられません。
前作はキミキスやったけどな。安直の極みやね。
エロゲっぽいですよね。親にタイトル名見られたくないです。
パッケージ見られたらどのみちあんたこういうの好きなのってなるけどね。
そうでした。
まあ、だから、「クリスマスのトラウマの呪縛からいかに自由になるかが橘純一のモチーフであり、原動力である」、とclavis氏は書かれていますが、言い換えると、橘純一が一時的に失ってしまった、本来持っていた神性を取り戻すことが原動力、とも言えるわけやね。
そうですね。ですから、基本的に、こういったギャルゲーやエロゲーのように主人公が神として巫女たちのハーレムを形成する作品においては、トラウマを抱える主人公が呪縛から解放されていくという骨組みを取ることで、「神が一旦地に堕ちたものの元々持っていた神性を取り戻していく様」を見て、観客はカタルシスを得やすいのだと思います。
急に冷めるこというなよ。
すみません。
ここで橘氏について軽く触れておこうと思います。
はい。天武朝の命婦、文武天皇の乳母で、後宮の実力者であった犬養三千代が姓を賜り始ったとされています。三千代は美努王の妻、不比等の妻でもありました。
美努王との子、葛城王と左為王はそれぞれ橘諸兄、橘左為と名乗ることで、本来は一代限りの約束で賜った橘氏を後世に継承したんやったね。
ほんとうは、つきつめていきたいことはたくさんあります。事実上の祖となる犬養という姓の由来、橘氏が一代限りの約束で賜った儚く脆いものだったことなどなど。ですがここでは、「橘という氏は、天皇としての素質を備えた姓といえる」、ということに注目したいと思います。
折口君、初回から飛ばしすぎやないの?
天皇は、ミコトモチ、つまり神の言葉を持つ人物です。神の言葉を正しく人々に伝える間は、天皇も神と同じ立場になります。
ああ、さっきの話と繋げたいんやね。
はい。天神の言葉を正しく伝えることができれば、天皇は神となれるし、また神の言葉を聞いた人々は幸福になれる。
言霊信仰やね。確かにギャルゲーやアニメは、言葉が全ての物語の根幹をなしている以上、言霊信仰との相性は抜群やな。けどさすがに変態紳士が天皇ってのは突飛すぎるんとちゃうの?
天皇が住む場所は宮ですよね。そして妹の名前は?
み、、、美也や、、、
天皇は国々の産物を献上され、代わりにその国々を治めます。この統治をヲス(食す)、といいます。そして天皇の支配する国はヲスクニと呼ばれます。
大嘗祭なんて今でも行われてるもんね。
はい。天武天皇の時代から続く大嘗祭は現在でも行われており、献上と統治の相互贈与儀式が行われています。悠紀国と主基国に選ばれた国の田んぼから栽培した新穀が天皇に献上されています。
それがアマガミとどう関係あるのよ。
6人のヒロインは、橘純一天皇のいる中央、つまり宮(美也)に対して、各国(地方)の国魂の象徴である、ということです。アマガミ世界、ゲームにおいては64*64のヘキサマップこそが、天皇橘純一のヲスクニであり、各国の国魂を具現化したヒロインたちが、天皇に自らを献上することで、天皇の妻となる機会を狙っているということです。
なるほど、まったくわからん。あれか、天皇に対して、ヒロインたちは采女、舎人、刀自とかってことか。
そうともいえますね。ただし、ヒロインたちは天皇である橘純一に即ゾッコンというわけではありません。彼が天皇ではあっても、天神(アマガミ)の言葉を正しく伝えている間でなければ、神と同じ立場ではありません。天神の言葉を正しく受け取り、伝えることによって、彼自身の神性を獲得(あるいは回復)できなければ、橘純一はただのトラウマに犯され汚れた男として、地に堕ちたただの冴えない人間として、スルーされてしまう。
さっきの唯一神的存在としての天神=橘純一と、巫女であるヒロイン=天が彌たちの関係を、天皇と采女たちに言い換えっちゅうわけやね。さすがに類化性能暴走しとらんか。
すみません。ここで言いたかったことは、ふたつだけです。ひとつは、あいからわず橘純一は唯一神的性質をもった存在であること。もう一つは、彼が天神としての地位を回復するためには、天の神の正しい言葉を伝えなければならない、万が一間違った言葉を伝えてしまうと、彼は神性を獲得、回復できず、ヒロインたちと結ばれず、さえないクリスマスを過ごすということです。
橘は世界の創設者だから中央における絶対的存在で、神の言葉でただしくヒロインを口説かなトラウマを克服できんしめでたくゴールインもできひんっていう普通の話を例をかえて繰り返し言ってんのね。
そういうことです。三次元的な図形で表すならば、アマガミ世界は橘純一を中心に据えたトーラス的な世界であるということです。

そのへんにしといてくれるか。
はい。







とはいえ、ここまで思考のお遊びを繰り広げても、まったくその強度を失わないアマガミ世界の揺るがない軸には、目を見張るものがあります。
たしかに、clavis氏のブログだって相当突飛な着眼点を提示したにもかかわらず、あのレビューを通してむしろアマガミ世界がよりおもろく見えるもんなあ。不思議やわ。
思うに、こうした物語の強度が強い作品、神話といってもよいかもしれませんが、神話的で普遍的な内容を持つ作品ほど、長きに渡り愛される傾向にありそうです。
2022年10月、いまだに中古でPS2アマガミソフト5000円くらいするしな。
あとそういう優れた作品は同人誌の展開も盛んですね。
それはしらんけどもやな。
さて、アマガミ世界の概要については、一旦区切りたいと思います。本編である第一話の方に戻りましょう。
OPはazusaの『i Love』。譜割りがおもしろく、歌詞はこっぱずかしい。これだけ小っ恥ずかしい歌詞で内容に大した起伏もないラブソングでありながら、みずみずしさと良い意味での素人っぽさがあって新鮮でした。
I love you forever with youっておかしくないの?with youってしつこくないの?頭痛が痛いみたいなことちゃうん?
冬の朝の橘家。妹の美也が、押し入れにこもる兄橘純一を起こしにやってくる。
シーン3
押し入れプラネタリウムの中で2年前を回想する橘純一。
シーン4
押し入れを開ける美也。入ろうとするも、入れない(近親相姦)



2年前のクリスマスイブは雪が降っていて星が見えなかったが、橘純一の押し入れの中では星を見ることができる。みたまんま橘純一の孤独を表すメタファーであると同時に、押し入れプラネタリウムは宇宙、洞窟、子宮的空間でもありますが、そこに籠っていては物語は進まない。橘純一は天照大神で、この押し入れプラネタリウムは、王の力を手に入れた素戔嗚(スサノオ)の粗暴さに困り避難した天照大神の隠れた天岩戸であるというのもしっくりきます。橘純一の繊細ながら優しいところも天照大神のイメージに合うかもしれません。
確かに素戔嗚的な人格であればはじめからヤリチンそうですもんね。で美也がアメノウズメの巫女なんですね。なんにせよこの押し入れは異界と現世を繋ぐ扉ってことですね。
橘純一が神だった頃の記憶に浸る自慰空間ともいえます。おいおいこの押し入れについてはもう少し考えてみたいですね。美也が入るのは同じ子宮に戻る擬似的な近親相姦になるから無理だけど、薫だけは後々この押し入れに入ってますよね。
薫が素戔嗚なんじゃないの。粗暴だし。
違うと思います。
登校。美也が紗江を見つけ走っていく。
シーン6
橘純一は梅原と合流。お宝本を媒介としたコミュニケーション。



今や何でもかんでもみんなFANZAですからね。
私はXVIDEOSですね。
人種の坩堝やもんね。
紗江という存在の意味については紗江パートでじっくり考えたいところではありますが、正直アニメの紗江パートはキャラの深みがほとんどいかせてないので、今ここで重要な点だけいっておきます。紗江は、美也の「にぃにを好きになってくれる女の子が現れてほしい」という願いが叶って天からの贈られたプレゼントではないかという説があり、私もこれを強く支持したいと考えています。
確かに、一人だけなんか毛色違うよな。
彼女は今年の2学期からやってきた転校生で、アマガミ世界の創世の全くの外側からやってきた存在です。それゆえ、地に堕ちた橘純一の本来の神性をいちはやく見抜き、一目惚れしたのではないでしょうか。
にぃにのことを好きになってほしい、つまり、橘純一の本来の神としての性質に気づいてくれる女の子が現れてほしいということこそ、美也の願いだったというわけですか。
左様でございます。ただ、そういう、「弱った人間に対しても本質的価値を見出せるメタモンの様に柔軟な対応性を持った女の子」として作られたが故に、変なオタクなどの姫に成り下がる脆弱性も孕んでいるということでしょう。
ソエンendは複雑な気持ちになったわ。ミルクフォーチュン。
通学路の風力発電のモンタージュ。七咲、梨穂子、薫の登校の様子。
海と風力発電機については後々考えたいと思います。どういう意味があるんでしょうね。
セックスやね。
やっぱり好きなんですね。
実際は風というテーマから、海と陸の話まで敷衍できるんちゃうかね。
ゆるやかな坂から森島先輩(と塚原先輩)の後ろ姿を見上げる+森島先輩の静止画


この時点ではまだ橘純一が森島先輩に一方的にアコガレているだけで、それが坂の高低を使って表現されています。
ここから4話に渡り関係を築いていくわけですね。
森島はるか、という名前については、もうちょっと後で詳しく考えます。ただ、精霊の住処である森、海の中からできた陸の誕生を示す島、そして遠くはるか彼方、ひいては彼岸、あの世をも指し示すことのできるはるか。大変スピリチュアルな名前ではあります。
あとあと森島先輩のエピソードの中でまんまそういう海のはるか向こうの島でてきますね。
章名「アコガレ」 校舎の外観、廊下、教室へフレーム移動。
シーン10
教室は朝のHR。創設祭実行委員決め。誰も立候補しない中、クラス委員である絢辻さんが立候補し、掛け持ちすることに。


名塚最高や!エウレカなんてなかったんや!
絢辻さんがなぜクリスマス創設祭に立候補したかは、彼女の実存にかかわる重要な問題です。
内申のためやろ。
そこら辺が重要になってくるんですよね。彼女は交換原理に基づく資本主義的サバイバルをモットーにしています。見返りを前提とした労働以外は無駄だからしない主義。内申点も然り。割に合わない仕事はやらない。そんな中に、見返りを前提とせず純然たる善意で動く奇妙な人間が現れるんですよね。
橘純一やね。
ええ。彼は元々神の素質を持っています。神というのは、純粋贈与者です。見返りを前提とせず、ばらまくことができます。普通の人間であれば、いくら、富や名声のような黒い心を一切持たずに贈与を行おうとしても、結局、自分のやったことは自分の本性を逸脱した行為であると、その偽善性を反省せざるを得ないものです。
はい。寿司屋の屋台に並んでみたものの高すぎて何も食べられなかった小僧をみて、参議院議員が素直な親切心から、みずからの正体や名前など一切バレない形で小僧に寿司を食べるよう金を渡したところ、善意のつもりで行ったのにかえってひどく罪悪感にかられてしまう話です。小僧は神様のしわざではないか?と神秘的な体験のように感じ取り、一方参議院議員は自分はそんな神のような施しをできるほどの器ではないと自分の行動に嫌気がさしたわけですね。
絢辻さんルートで大切になってくるのは、等価交換の原理を絶対の前提と信じ、学校という社会で資本主義的サバイバルをする絢辻さん(心を酷使する仕事人)と、交換の原理から外れ、純粋な贈与を行うことのできる不可思議な橘純一(性質としては神)という両者の間の、いわば価値観の戦争やねんな。
これがまた、絢辻さんも頑固者だから、自分の尺度に合わせて世界をねじまげようとしたり、主義を貫くために自分の人格を破綻させたりするんですよね。
痛々しいよな。
絢辻さんについては書きたいことはいっぱいあるので、絢辻さんの回まで取っておきましょう。
イエス!
昼休み。中庭の風景から教室の風景へ。薫の発案でおつかいじゃんけん。
橘純一は負けることで、物語を先に進める。

負けることで物語を進める。こういう性質は、唯一神的というより、対称性の原理に基づいていますね。
絶対唯一神やったら勝つが勝ち、俺が真理や、ひれ伏せ、ガッハッハ、やもんな。それはどっちかっていうと素戔嗚やもんな。素戔嗚の粗暴さから逃避してきた心優しい天照大神としての性質はやっぱりありそうやね。
そうですね。先程アマガミ世界の唯一神であるとは言いましたが、それは物語の主人公として必然的に生まれる形式的な性質、と補足したほうがよさそうです。そして、ただ一人の人間のキャラとして見れば、(天照大神だった天神が、天岩戸=押し入れプラネタリウムを潜り抜けて地上に降り立った影響か)、こうした「負けるが勝ち」的な、論理だけでは説明のつかない神通力をどんどん発揮して物語を進めていきます。他にも、熊のキーホルダーのゲットであったり、姓名診断ゲームであったりと、非論理による難関の突破は、枚挙にいとまがありません。主人公なんだし話進めるためにもそりゃ全部うまくいくでしょう、と言われたらそれまでなのですが、それらがあまりにご都合主義的にうまくいきすぎているだけに見えると、物語は破綻し説得力を失ってしまいます。単にアマガミ世界の創設者として唯一神的に偉そうに君臨・鎮座するのではなく、クリスマスのトラウマを抱え、傷をもった当事者として地上に降り立ったからこそ備えることのできた優しさや神通力があったのでしょう。
その神通力を使って、困っている中多さんの代わりにパンを買い、その様子を偶然森島先輩に見られることで、先輩から話しかけてもらうチャンスを作るわけやな。
そういうことです。
混んでいる食堂。立ちすくむ中多紗江に話しかけ、かわりにパンを買ってきてあげる。
シーン13
お金払います!とアピールする中多紗江に360円だったよと告げ、お金を受け取る。一部始終を遠くから森島先輩が見ていた。



シーン14
廊下でビニール袋に躓き、買ったパンが散らばる。
シーン15
森島先輩がパンを拾ってくれる。橘純一は座ったまま、先輩を足下から見上げる。自分の名前を知っていた橘に驚くはるか。二人はこうして出会った。
シーン16
はるかが視線を合わせしゃがむ。じっと橘の目を見つめる。そらそうとするのを両手で阻み、「可愛らしい目をしてる!」さらに、先ほど紗江を助けていたことも褒める。



ここらへんは付け加えて特筆すべきことはないです。はるかの「どこかで会ったことあったっけ?」というのは伏線です。
先輩が去る。残り香に酔いしれる。
シーン18
梨穂子が通りかかる。パンを一人で食うのかという指摘に、「な訳ないだろ」とツッコミを入れる。
シーン19
純一から歩き出す。梨穂子がそれについていく。



ここでは簡単な対比が作られていますよね。森島先輩から大食い君と呼ばれても、それを訂正する余裕すらなかった。梨穂子から一人で食べるのかと聞かれたら、余裕をもってな訳ないだろ、とつっこみ、梨穂子なら食べられそうだとからかう余裕すらある。
梨穂子っつうのは、橘純一の童貞臭を消すためにしょっちゅうファブリーズ的役割を果たすよな。
他のヒロインとの関係進展の前触れで必ず現れるといっていいレベルですね。
性欲にギラついて暴走しかける橘純一をフラットに戻してくれる存在なんやね。
純一が作り出したアマガミ世界に支配されていない、幼馴染としての特別な時間軸を有していますからね。神だった頃の橘を既に知っており、今も変わらず慕っている。ゆえにそんな梨穂子と接することで、純一は極めて自然体に戻ることができます。
感謝。
教室に戻り昼食。絢辻さんからプリント提出を催促される。
シーン21
放課後。高橋先生の後ろ姿、噴水、校門、梨穂子を映してから、教室へ戻る。絢辻さんにプリントを提出したあと、昼飯代の徴収とお宝本の取引の約束のため、梅原を探す。
シーン22
図書館へ。お宝本で頭がいっぱいなので、森島先輩とぶつかる。
シーン23
先輩の荷物持ちより大事なことはない、と、梅原のことはどうでもよくなり、先輩の借りた本を運ぶ。





ここでは先ほど梨穂子に対する自然なからかいを挟んだことで再び対比になっていますが、また森島先輩という憧れの存在を前に、余裕がなくなり、主導権を完全に握られています。
親友との約束を、先輩との荷物持ち以下にカテゴライズしたからな。
しかも約束を放棄してまでやってるのはただのアッシー。都合の良い、単なる優しさの搾取対象でしかありません。
こういう状態の橘純一では、とてもではないけど、先輩はおろか、誰も橘のことを魅力的とは思わんやろね。
はるかと歩いていたら、ひびきと遭遇。
初めて名を明かす。
ひびきが名前も知らず荷物持ちを頼んでいたはるかに呆れるも、はるかに「橘くん優しいから大丈夫だってわかってた」、と微笑まれ、丸め込まれる。



タダで男がいうこときいてくれるための方法を熟知しています。計算ではなく天然でやっているのがえらいもんです。
本当は腹黒いんちゃうの?
当然湧いてくる疑問ですよね。百戦錬磨の高嶺の花は、狡猾なのではないかと。その辺りは続きを見ていけば明らかになっていきます。
遅れて梅原が登場。図書館で発見したお宝本について熱弁するも、上の空の純一。
クリスマスのトラウマを乗り越えようと決意し、夕陽の窓を見ていた。
馬跳びする純一。心の中では2年前のトラウマを振り返る。
シーン27
私も入れてえ!と純一に乗っかる森島先輩。ええいええいええい!と揺さぶるも力を分散できず崩れる。

トラウマを再度回想してるのは、めっちゃ引きずってるというより、これは単にCM明けから見てる人のために、軽く橘純一というキャラの内面と動機の説明やね。
馬乗りのダブルミーニングはそのまま意味です。
先輩とピロティを歩く。美也と遭遇。生意気なばっかりなんですよ〜とおどける純一と、警戒したように緊張しその場を去る美也。猫ちゃんみたいと森島先輩は嬉しそう。
シーン29
仲良くなって一緒にお風呂に入りたいという先輩の言葉から、二人の入浴シーンを妄想しながら、教室に戻る。




一緒に買い物行きたい件は橘の妄想からは完全にオミットです。
放課後。美也を見つけた純一は、美也と仲良くなりたいと言っている先輩に対する昼間のつっけんどんな態度の理由を問い詰める。それに対して仲良くなりたいのはにぃにの方でしょ、とキレる。

「森島先輩美人だしスタイルもいいもんね!」とここまでヒロインに嫉妬心をむき出しにするのは、全ヒロイン全パートの中でもこのパートだけです。
やっぱ美也は自分の未熟な身体性へのコンプレックスはあるんやろね。
確かにそれはありそうです。でも紗江ちゃんのふかふかボディに対しては、純粋に憧れ、ご利益(りやく)の対象としか見ていません。梨穂子も巨乳ですが、特に言及はありません。他のヒロインにも特に嫉妬している様子はないです。ここは大事なので、少し深く追求します。つまり、美也は、森島先輩が、橘純一の唯一神としての立場を脅かすほどに、強大な力を秘めた存在であることを察知し、森島の強大な引力に純一が圧倒され橘が神としての尊厳をあっけなく引き渡してしまうことに、恐れをなしているのではないでしょうか。
簡単にいえば、兄はもともとかっこいいのに、トラウマのせいでダサくなり、森島先輩の前ではさらにダサくなって搾取されているから、見てられないってことやね。
他のヒロインは、あくまで橘純一と好き同士になれるにはどうすればいいか、神である橘純一と並んで歩くのにふさわしくあるためにはどうすればいいか考えてくれます。自らが神になろうとも思っていません。絢辻さんは少し神になろうという欲はありますが、それも全然、脅威ではないのです。美也が絢辻さんに特に嫉妬しないことからも、美也は絢辻さんは神たりえないことは見抜いていると思われます。しかし、森島はるかは、圧倒的にもて、見返りを求めずに無自覚的に美を振り撒き続けることができ、自身が女神的存在になっている。森島がそんな立場にあるから、橘純一を神として認識するまでには相当の障壁がある。その障壁を乗り越えられない限り、橘純一をただのアッシーメッシーの凡夫に陥れてしまう危険性を持っているわけです。
なるほど。他のヒロインは少なくとも橘純一を、対等な関係か、あるいは初めから好意の対象として、神聖視・特別視してくれている部分があるが、森島はるかに関しては、高嶺の花と路傍の石からのスタートというわけやもんな。
わんちゃんみたいで可愛らしい目、優しいところなど、第一印象はことごとく良さそうではありますが、それはただ単に、とりあえず好きなタイプには入る、というだけの話なのです。これは森島はるかのソエンルートに出てくる「樹里ロミオ」というキャラの存在を出すとわかりやすいでしょう。

そんなんいたっけ。
アニメには出てきません。ゲームで出てくる彼は、はっきりいうと、ジェネリック橘純一なのです。容姿、おどおどした様子、可愛らしいほっておけない感じ、全てが橘純一と類似しています。これはゲームをプレイした方であれば、主人公の類似として作られたキャラだということはエピソードからおわかりでしょう。ロミオという名前も、主人公性を端的にあらわし、即効性のインパクトはあります。
結局そいつ森島先輩のなんなん?
いいとこまでいったけどだめだった、という話がソエンendで判明します。
はっ、所詮は偽物じゃけえ。
何がいいたかったかというと、樹里ロミオのような、あるいは見かけとしての橘純一のような、「わんちゃんみたい、ほっておけない、可愛い目をしてる、やさしい」それが森島先輩のタイプであり、アニメ1話における橘への好感触も、所詮はこの条件をクリアーしただけの愛玩動物としての扱いにすぎないということです。
それなのに、ウッキウキしちゃってるにぃににキレるのは自然やな。
(美也と純一の口論を見ていた紗江、プールで泳ぐ七咲、茶道部の梨穂子、校舎裏の薫と恵子、立ち尽くす純一、図書館の絢辻=時間経過の表現)
シーン32
噴水を眺める先輩。下駄箱でカイロを握りしめる純一。噴水の先輩を見つける。
シーン33
歩み寄り、使い捨てカイロを渡す。水を見るのが好きだというはるか。
流れで告白を強要され、真顔で吟味された挙句、年上で頼りがいがある人が好みという理由で振られる。



「優しいのね。」
「そんなことないです。」
「そうなの?じゃ、私にだけ優しいのかな。もしかして、私のこと、好きなの?なんちゃって」

戸惑い、何も言えない橘純一。
「そうよね…残念」

「あったかーい」(カイロを頬に)
呆気にとられる。
うつむく。


風が吹き、先輩の髪を靡かせる。木々がざわめく。夕焼けの空。純一は拳を握り、告白を決意する。



「好きです」

「本気?」

「はい!本気です!」

(今までずっと笑顔だった森島先輩が、初めて、全く笑っていない。)吟味する。
「そうなんだ。ふうん」


「すごく嬉しい。でもダメ。」

イヤー〜ーーーーーーーーーーーオ!!!!!
アマガミでも有数の名シーンのひとつだと思います。
ほとんど書き起こしに近いですね。これ見ると、橘は、完全に森島先輩の誘導に乗っかってしまってますね。
そもそも噴水の水を見てたところに吸い寄せられていって、使い捨てカイロを献上してますからね。
カイロあげるかね。
ここで、「使い捨てカイロ?」とわざわざ先輩が聞いてるのがミソだと思います。もし成功する告白の前だったら、使い捨てなんて言葉、本来出る幕もないはずですよね。
確かにな。使い捨てカイロゆうのは、森島先輩がかつて何度も経験してきた、一回きりの告白、それっきりの関係で終わってきた過去の恋愛(未満の何か)のメタファーかもしれんな。
そして森島先輩は、自身が無意識的にばらまいてしまうモテのフェロモンに、まんまと引っかかってくる有象無象に対しては、早い段階からフィルターをかけて、選別したいわけですね。あとあとトラブルや面倒な関係になるのを警戒しているのではないでしょうか。
そう考えると、彼女は本当の意味ではもてているとはいえんわな。恋愛のプロではなく、お断りのプロやね。自分にとって都合のよくない状況になるまで好意を振りまいてしまうというのは、自分の力をコントロールできてない証拠やないの。
そうですね。高3であれば全然普通のことではありそうですが。ただ、必要以上にもててしまっているという仮初の成功体験は、彼女が本当に自分を解放できるような恋愛を経験することを、むしろ妨げてしまっているかもしれません。
自分からミスサンタコンテストとかノリノリで出るし、そういう部分での毀れというか、ストッパーの効かなさがあるのよな。
彼女を示すのに花という言葉はとても適していますよね。高嶺の花。永遠ではない美。水が好き。キャラソンもまんま、「花」です。とてもいい曲だと思います。森島先輩だからこそという歌詞はあまりないですが。
そして花であるゆえに魅惑の香りをふりまくことにコントロールが効かない、と。そういう「有限だが無尽蔵な美」に対して歯止めをかけるのが、「無限だが不動」たる、ひびきやな。
コノハナサクヤヒメとイワナガヒメの神話のペアですよね。サクヤヒメは刹那的だが極限のない美、やわらかさを、イワナガヒメは醜さと永遠の命、かたさを象徴していた。美しいサクヤヒメを嫁に出す時、当時のならわしでは姉妹をいっぺんに嫁入りさせる習慣だったため、サクヤヒメと一緒にイワナガヒメも嫁に出した。しかしホノノギノミコトが醜いイワナガヒメを拒んだため、娘の父ヤマツミが激怒し、それ以降人間は死というものを味わう運命を負った、というおはなしです。
たしかに塚原先輩って岩みたいな顔してるもんな。
いっぺん死んだ方がいいですよ。
自分の美をおさえきれないからこそ、森島先輩は神となる素質があり、それを美也は恐れていたという話やったな。まあ、先輩本人は、名前も知らない大食いくんに本を運ばせて手なづけて即惚れさせてしまうくらいやから、自分の天真爛漫さで相手を傷つけたり、自分自身が傷ついたりという経験は痛いほどしていて、それを監督するのがひびきということなんやろね。
それがわかるのが、橘純一の告白を「本気?」と確認するシーンの顔ですよね。ふだんあふれていた愛嬌が消え、冷たく鋭い眼差しになっています。
この目つき、、、たまらんね。
これに似た目つきを別の場面でも見ることはできます。森島先輩のスキbadです。ただしこちらは、人間への信頼のなさも加味されてしまっている冷酷な目つきです。
それは、、、見たないね。
ともあれ、美を振り撒き続けても平気でいられる、神としての素質を持ちながら、人間としての身体の制約、人間関係の面倒臭さからは逃れられず、それゆえに、度々、このように鋭い目つきで相手の真意を探り、テストする。彼女はそうすることで、普段は無意識でいたずらに引きつけ過ぎてしまう人との距離を、彼女なりに図り直しているということですね。
しかもこれ高3の冬やろ。もうセンター試験とかの勉強せなあかん時期やないか。そりゃ、のんびり恋愛してる暇もないね。
そうですね。大事なことは、ここでのやりとりでは、森島先輩は、橘純一を手玉にとること自体を目的にしているわけではなさそうだということです。それが目的であればこんな鋭いまなざしで相手を探る必要がありません。ただ単に、自分が、相手が、のちに傷つかないために、関係性を図るテストを、早い段階で行っている、ということではないでしょうか。また、高3の冬でもう卒業が近いという事実も、森島に、関係性の結論を早めに出しておこうと思わせるのかもしれませんね。
森島先輩がただの無敵の恋愛女王ではなさそうだということが見えてきました。
これは次回以降、より明らかになっていきます。
先輩に告白を振られ、一人取り残される純一。それを連絡通路から発見する絢辻。
シーン37
帰宅し、美也のまんま肉まんの誘いも無視して、自室の押し入れへ。

絢辻さんはほんまに、ことあるごとに橘を発見してますね。
これは橘への好意ではなく、自分と完全に異なる行動原理を持っているという橘への、興味の現れやろうな。
あるいは同じ時間を何度も遡行し、その度に因果律を束ね強めていく橘純一という存在を、興味深く観測しているのかもしれません。
それインキュベーターや。
ED

第二話に続く
アマガミSS 第二話レビュー
https://somimy.hatenablog.com/entry/2022/10/12/135334